研究課題
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は、DMD遺伝子の変異によりジストロフィンが完全に欠損し、その結果全身の骨格筋・心筋の変性・壊死が進行性に起こる。最終的には、呼吸不全または心不全・不整脈により30代半ばで死亡する致死性疾患である。近年、臨床応用が進むアンチセンス核酸を用いたエクソン・スキップ治療はDMDを軽症のBecker型筋ジストロフィー(BMD)に転換する方法である。また、エクソン・スキップ治療はゲノム編集技術を用いても可能である。我々はDMD遺伝子エクソン3-9欠失患者が無症候であることを報告し、DMDの約10%がエクソン3~7の領域に変異が集積していることから、エクソン3~9内に変異を有するDMDに対するエクソン3-9スキップが極めて有効な治療法になることを提案してきた。本研究では、1)理研より入手した健常男性iPS細胞をゲノム編集技術を用いてCaインジケータ遺伝子R-CaMPと活動電位インジケータ遺伝子ASAP2sを組み込んだ後、エクソン3-7および3-9欠失型iPS細胞の作製に成功した。2)これらのiPS細胞株から心筋細胞へ分化誘導後、Caの動態および活動電位を確認できた。3)エクソン3-7および3-9欠失型心筋細胞について成熟化因子であるミオシン軽鎖遺伝子やトロポニンI遺伝子、心筋負荷マーカーである心房性や脳型ナトリウム利尿ホルモン遺伝子、Na・Kイオンチャネル遺伝子の発現異常を見出し、BMDの表現型を示すエクソン3-9欠失型に比べてDMDの表現型を示すエクソン3-7欠失型においてこれらの遺伝子の発現異常が顕著であることを初めて見出した。現在、これらの遺伝子発現異常について、エクソン3-7欠失型心筋細胞に対しアンチセンス核酸によるエクソン8、9スキップ治療を行った細胞とゲノム編集によるエクソン3-9欠失細胞の遺伝子発現について検討を行っている。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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