研究課題/領域番号 |
18H02580
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
五嶋 良郎 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (00153750)
|
研究分担者 |
増川 太輝 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10711898)
小池 正人 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80347210)
新井 信隆 公益財団法人東京都医学総合研究所, 病院等連携研究センター, 参事研究員 (10167984)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | L-ドーパ / 受容体 / GPR143 / トランスポーター / ドパミン作動性神経伝達 |
研究実績の概要 |
課題 I) ドーパ含有小胞の証明:一昨年度は、市販の特異的抗ドーパ抗体を用いて、ドーパ陽性シグナルを光学顕微鏡レベルで観察・確認したのち、超薄切片を作成し、免疫電験において、ドーパ陽性シグナルを内包する小胞構造の有無を検索することを試みたが、組織内において特定の小胞構造内に局在する分布は認められなかった。このため、本年度は昨年度に引き続き、より高親和性の特異的ドーパ抗体の作製を試みた。その結果、新たに得られた特異的抗ドーパ抗体によって、黒質緻密部、あるいは側坐核に、ドーパ合成酵素チロシン水酸化酵素(TH, tyrosine hydroxylase)の局在とほぼ一致するシグナルの検出に成功した。また、ドーパトランスポーター分子、rBAT (SLC3A1) およびこれと複合体を形成してドーパ取り込み活性を持つようになるBAT1(SLC7A9) が、脳内において特定の神経・非神経細胞に共局在することを見出した。 課題 Ⅱ) PDモデルにおけるGPR143の役割の解明:本年度は、GPR143が、PDの病態とどのような関係性を有するかを検討するため、PDモデル動物において、野生型とGPR143遺伝子欠損(GPR143-KO)マウスとの間でドパミン神経変性の程度を比較・解析を行いつつある。ドパミン神経の選択的脱落を引き起こす1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6- tetrahydropyridine (MPTP) を処置したPDモデルマウスにおいて、TH免疫陽性シグナルの低下の程度に野生型との間で有意な差異が認められた。 課題 Ⅲ) GPR143の情報伝達機構:すでに、GPR143とアドレナリンα1受容体との機能的連関を見出し、すでにこの両者の相互作用部位を絞り込みつつある。この配列情報を参考に、DA受容体D2Rについて、同様な相互作用の有無を検討し、この相互作用が、D2Rシグナルに一定の影響を及ぼすことを見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドーパについてのトランスポーター分子の同定は、そのためのツール開発を行ってきた。今回、新たに特異的抗ドーパ抗体を獲得することができた。これを用いて、ドーパ含有小胞の形態学的解析を行う準備が整った。一方、GPR143が他のGタンパク質連関型受容体(GPCR)と相互作用し、様々なシグナル伝達の制御を行っていることを示唆する知見が集積しつつある。全体として、概ね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
課題 I) ドーパ含有小胞の証明:昨年度の取り組みによって獲得された特異的抗ドーパ抗体を用い、まずは光学顕微鏡レベルにおいて、ドーパシグナル陽性シグナルが、TH阻害によるドーパ合成阻害により減少をするか否かを検討する。陽性シグナルの減少を確認できた場合、線条体、黒質、孤束核において、免疫電験による解析を行う。また、rBAT (SLC3A1) およびBAT1(SLC7A9) を、線条体あるいは孤束核局所においてshRNAによりノックダウンした際、当該部位における微量透析法によって検出されるドパミン、ドーパの量的変動を、ノックダウン前後で比較する。 課題 Ⅱ) PDモデルにおけるGPR143の役割の解明:本年度は、GPR143が、MPTPによる神経変性のどのプロセスに関与するのかを解析する。すでに、GPR143が、神経および非神経細胞(特にグリア細胞)においても発現していることを見出している。グリア細胞の中でも、ミクログリアが、PDに伴う炎症ならびに神経変性に関わることが示唆されていることから、ミクログリアにおけるGPR143のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、MPTPによるドパミン神経変性の程度を野生型と比較解析する。 課題 Ⅲ) GPR143の情報伝達機構: GPR143とDA受容体D2Rとが、相互にどのドメインとの間で相互作用するのかをGPR143と類似の機能、構造を有するGPR37との間のキメラ変異体を作成して解析する。相互作用部位が決定された場合、この領域を含むペプチド配列が、GPR143とD2Rとの分子間相互作用ならびに機能的連関を阻害するかどうかを生化学的、行動学的指標を用いて解析する。
|