研究実績の概要 |
当該年度では、1)既に初年度、次年度で確立した新たなモノクローナル抗L-ドーパ(ドーパ)抗体を用いて免疫組織化学的解析を行った。その結果、ドーパと考えられる陽性シグナルを検出することに成功した。2)GPR143 mRNAは、ドパミン作動性神経系の細胞体が局在する黒質緻密部及び腹側被蓋部に局在すること、またその投射先である線条体及び側坐核に局在する細胞体に発現することを見出した。3)GPR143-GPR37キメラ体を利用し、GPR143とα1ARとの相互作用部位を見出した(未発表データ)。一方、GPR143をPC12細胞株に強制発現したところ、神経突起伸長が著しく抑制された。この抑制効果は、ドーパ拮抗薬のL-ドーパシクロヘキシルエステルによって抑制された。さらに、すでにヒト遺伝子解析で明らかとなっている複数のGPR143変異体で、同様な活性が現れるかどうかを解析したところ、変異体では野生型GPR143に見られた突起伸長抑制効果は認められなかった。さらに、三量体Gタンパク質Gα13のsiRNAノックダウンは、GPR143効果を抑制した。これらの結果は、GPR143のシグナル伝達にGα13が関わる突起抑制経路が関わることを示唆する。一方、GPR143-KOと野生型マウスの薬物応答の相違の有無を解析した。その結果、ニコチンの急性及び慢性効果の双方において、GPR143-KO マウスにおいて、野生型に比して、その効果が減弱することを見出した。4)GPR143のパーキンソン病(PD)の病態に関わるかどうかを解析するため、PDモデル動物として1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)処置マウスを確立した。このMPTP処置モデルマウスを用いて、野生型とGPR143-KO マウスにおけるドパミン神経変性の比較・解析を開始した。
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