特異な中分子骨格の生合成を担う遺伝子の探索源として、物質生産に秀でた海綿共生微生物に着目した。我々が先行研究によって見出した海綿共生微生物Entotheonellaや、その他海洋天然物生産微生物の同定を試みるとともに、それらがコードする生合成遺伝子の同定を進めている。特にこれらの微生物は難培養性であるため、メタゲノム解析が必須となる。昨年度に引き続き沖縄産海綿Cacospongia mycofijiensis由来のポリケタイド類の生合成遺伝子を探索を進めた。海綿メタゲノムDNAのショットガンシークエンス解析によってtrans-AT PKSの配列断片をコードする複数のコンティグを見出したが、latrunculin Aやlaulimalideなどに該当する生合成遺伝子は検出できなかった。一方で、奄美大島近海から採集した海綿Discodermia sp.よりメタゲノムDNAを調製し、次世代シークエンサーによる解析を実施した結果、calyculin Aなどの生合成遺伝子クラスターを見出すことに成功した。現在さらに詳細な解析を行い、PKSやNRPSの遺伝子クラスターの探索を進めている。さらにspongistatinを含む沖縄産海綿Hyrtios altumにおいてはショットガンシークエンスにおいても通常のPCRによる増幅配列においてもtrans-AT KSドメインの配列を検出することはできなかった。そこで異なる領域の縮重プライマーを用いて複数回のPCRを行いtrans-AT KSドメインの配列をエンリッチした。増幅断片の配列を確認した結果、trans-AT KSの配列断片の検出に成功したため、現在、得られた配列を利用した解析をさらに進めている。
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