研究課題
抗がん剤などで引き起こされる肺線維症は、臨床上大きな問題であるが、発症のメカニズムは不明である。肺線維症は、筋線維芽細胞による過剰な細胞外マトリックスの産生に起因するが、近年、その由来として肺胞上皮Ⅱ型細胞の筋線維芽細胞への転換(上皮間葉転換;EMT)が注目されている。本研究ではマイクロRNA(miRNA)に着目し、特定のmiRNAが薬剤誘発性EMT、ひいては薬剤性肺線維症の原因、バイオマーカーおよび治療標的となり得るかについて検討することを目的とする。令和3年度の成果は以下のとおりである。令和2年度にはブレオマイシン(BLM)の気管内投与によって作成したマウス肺線維症モデルを用いて検討を行ったが、肺胞上皮Ⅱ型細胞内での変化を解析するには必要量のⅡ型細胞を単離できるラットの方が適している。そこでラットにBLMを気管内投与し肺線維症モデルを作成した。BLM投与ラットでは、投与14日後にコラーゲンの成分であるヒドロキシプロリンの肺組織中含量が増加しており線維症の発症が確認された。一方、肺胞上皮Ⅱ型細胞において、EMTのマーカーであるα-SMAのmRNA増加はそれに先立って投与7日後に観察された。BLM投与ラットの肺胞上皮Ⅱ型細胞において、miR-222の上昇が投与7日後に観察された。miR-222の上昇は、肺組織、血漿および気管支肺胞洗浄液中においても認められた。さらに肺胞上皮Ⅱ型細胞モデルであるA549/ABCA3細胞にmiR-222 mimicを導入したところ、α-SMAタンパク質の発現増加が認められた。従って、miR-222はBLM誘発性肺線維症の原因、バイオマーカーおよび治療標的となり得る可能性が示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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