研究課題
計画に従って以下の進捗状況にある。[1]モデルラットを用いた検討:これまでタクロリムス投与による慢性腎臓病様の病変を呈するモデルラットの作成は困難を極めてきた。今年度の検討において、様々な処置を試行錯誤することによって、麻酔下左右両方の腎動静脈を結紮し、一定時間を待って再灌流すると同時に腹腔にタクロリムスを投与したのちに腹部縫合する。その後連日タクロリムスを体重あたり5mgを背部皮下投与し続けることによって、14日目の腎組織像は臓器移植患者における合併症として最も多い慢性腎臓病様の薬物性腎障害を呈することが見出され、再現性も得ることができた。一方、この病変はある濃度のエベロリムス(mTOR阻害薬)を同時投与することによって、完全に抑制することができた。現在、エベロリムス併用による腎障害抑制効果の再現性確認とそのメカニズム解明に向けた検討を進めている。[2]これまでに約70例の生体腎移植患者由来の残余検体(病理標本作成に使用し、診断も終了した患者)を用いて、腎組織中のタクロリムスならびにその主要代謝物であるM-I、M-II、M-IIIの数値定量化に成功した。同時に全てのCYP3A5遺伝子多型解析もほぼ終えることができ、得られたデータの統合と臨床経過との比較を進めている。[3]肝移植患者については、エベロリムス投与前の臨床データを収集し、エベロリムスの投与開始となった患者の血中濃度データや臨床経過の集積が開始されるのを待機する状況にある。以上、平成30年度研究については当初計画した内容をおおむね達成することができたと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した計画通りに進めることができていると判断している。
当初の計画通り、動物実験ではエベロリムス投与によるタクロリムス誘発腎間質の線維化抑制効果について再現性を図るとともに、病態作成後に投与を開始した場合の治療効果も並行して検討する。また、その分子メカニズムについて特異抗体を用いた染色、ウェスタンブロッティングを始め、mRNAレベルの発言解析を進め、鍵となる分子の特定を目指す。臨床研究では、エベロリムス投与後の腎組織標本の収集を進め、組織中エベロリムスの濃度測定と臨床経過との比較解析と同時に、エベロリムスの薬効指標となる尿中バイオマーカーの探索を行う。肝移植患者についても腎組織収集以外(腎生検採取の適応にならないため)の同様の検討を進める。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 7件、 招待講演 9件)
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