研究課題/領域番号 |
18H02590
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大槻 純男 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (60323036)
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研究分担者 |
伊藤 慎悟 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (20466535)
増田 豪 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (70383940)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳関門 / 脳毛細血管 / 膜タンパク質 / 輸送 / プロテオミクス / 内在化 |
研究実績の概要 |
本研究は、脳関門における中・高分子輸送システム群(マクロトランスポートソーム)の分子的全容を明らかにし、「中枢・末梢連関情報インターフェース」としての脳関門機能を明らかにすることを目的とする。さらに、脳関門マクロトランスポートソーム情報を活用し、脳関門を標的、透過するDDSキャリア開発を行う。2019年度は、脳関門モデル細胞の脳関門マクロトランスポートソームの解明のため、前年度取得したヒト脳毛細血管内皮細胞株及び比較対象のヒト臍帯静脈内皮細胞の細胞表面タンパク質や内在化タンパク質画分のプロテオームデータから内在化選択クライテリアを構築した。さらに、高効率・高純度に脳毛細血管を脳から単離する技術を構築した。本技術によって単離したマウス脳毛細血管のプロテオームを決定した。これらの情報および構築したクライテリアを用いて内在化膜タンパク質を抽出した。脳関門モデル細胞を透過する環状ペプチドに関しては、昨年度同定した複数の環状ペプチドの細胞透過速度を比較し、優先的に解析をする環状ペプチドを決定した。選択した環状ペプチドの蛍光標識体のヒト脳毛細血管内皮細胞株への取込を確認した。その取込は温度依存性があり、マクロピノサイトーシス阻害剤によって阻害された。また、環状ペプチドを提示するファージをマウスに静注した結果、脳への分布が検出された。従って、同定した環状ペプチドはin vivoにおいて粒子であるファージの脳関門透過性を促進し、脳へ移行させる能力を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳関門モデル細胞の脳関門マクロトランスポートソームの解明は、質量分析の感度低下解決のためプロテオーム解析に遅れが生じたこと、また、新たな脳関門単離技術の開発によって追加データを取得する事で確度が向上した結果を得られる事が判明したため、2020年度に一部実験を実施する必要が生じた。2020年度には予定通りに研究を実施した。また、脳関門透過環状ペプチドに関しては、当初予定通りに研究が進行した。
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今後の研究の推進方策 |
脳関門マクロトランスポートシステムの分子機能の解明に関しては、これまでの解析とプロテオーム情報から生理的に重要性の高い分子の詳細解析を行う。In vivo脳関門輸送によるリガンドもしくは抗体の輸送を検討する。高分子脳関門透過・標的キャリアの同定については、環状ペプチドの体内動態解析及び、結合分子の脳内、血管内皮細胞内移行を解析する。不死化脳毛細血管内皮細胞を用いて脳関門の経細胞輸送のメカニズムを解析する。
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