研究課題/領域番号 |
18H02591
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
城野 博史 熊本大学, 病院, 准教授 (40515483)
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研究分担者 |
齋藤 秀之 熊本大学, 病院, 教授 (40225727)
大槻 純男 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (60323036)
松井 啓隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (60379849)
林 光博 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 研究員 (50735628)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CYLD / 個別化医療 / 分子標的治療薬 / 薬剤感受性 |
研究実績の概要 |
腫瘍抑制遺伝子 CYLD の分子診断を活用した分子標的薬治療の最適化・適応拡大により、予後不良・治療不応と診断されたがん患者に対する新たな治療選択提供の道を切り開くことを最終目的とし、本研究期間内では、以下の3つのサブテーマを実施し、以下の研究成果を得た。 【1】CYLD 消失の臨床分子病態解析・治療効果予測マーカーとしての有用性検証:多様な癌腫(口腔扁平上皮癌、乳癌、神経膠腫、新たに、卵巣癌、真珠腫、非小細胞肺癌など)を対象に、CYLDの臨床的意義およびCYLD 消失時の薬剤感受性の変化を検証したところ、CYLD 発現消失と生命予後不良の相関性が確認され、いずれの癌腫においてもCYLD 発現消失による薬剤感受性変化と患者の生命予後不良に関連性がある可能性が示された。 【2】CYLD 消失による EGFR 分子標的薬の治療効果向上メカニズムの解明:siRNA を用いて CYLD 発現を低下させたがん細胞株を用いた検討の結果、CYLD 発現低下に伴う各種細胞内シグナル(EGFR、Akt、MAPK、TGF シグナルなど)の過剰活性化が認められ、表現型の変化が各種 EGFR 分子標的薬の感受性に影響を及ぼしている事実が明らかとなった。 【3】CYLD 消失がん細胞における各種抗がん剤の感受性プロファイリング:各種がん細胞においてsiRNA によりCYLD 発現を消失させ、引き続き薬剤感受性プロファイリングを実施した結果、従来の細胞障害性抗がん剤に対しては耐性傾向を示すもの、一方で各種分子標的薬に対しては感受性が向上するもの、変化のないものなど、癌腫によって層別化されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、CYLD の分子診断を突破口に、予後不良・治療不応と診断されたがん患者に対する新たな治療選択提供の道を切り開くことを目指しているが、本年度の研究結果から、【1】多様な癌腫において、CYLD 消失と抗がん剤感受性の関連が確認されていること、【2】CYLD 発現低下に伴う細胞内シグナル(EGFR、Akt、MAPK、TGF シグナルなど)の過剰活性化と、それに伴うがん細胞の表現型の変化が抗がん剤感受性の向上に関与していること、【3】各種抗がん剤の感受性プロファイリングにより、特定の癌腫によってCYLD 発現の有無によって感受性が著しく変化していること、CYLD 発現による層別化の可能性、などの成果が得られており、臨床・基礎の両面から、次年度以降計画している分子標的薬治療の最適化・適応拡大を遂行する上で十分な知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間全体の目標である、分子標的治療における CYLD 分子診断の有用性の検証を遂行するため、昨年度から引き続き、本年度は以下の項目を中心に研究を実施する。 【1】癌腫をさらに拡大し、標準治療薬および分子標的薬の使用症例における臨床所見を精査し、CYLD 分子診断の効果予測マーカーとしての有用性を検証する。 【2】対象とする各種癌細胞(口腔癌:SAS、非小細胞肺癌:A549、卵巣癌:SKOV3、神経膠腫:U251MG、乳癌:MDA-MB-231、MDA-MB-468 など)を拡大し、CYLD 発現低下時の EGFR シグナル分子(K-ras、ALK、ERK、Akt など)を中心とした細胞シグナルの活性化状態を確認し、各種 EGFR 分子標的薬の治療効果向上メカニズムを解明する。 【3】CYLD 発現を消失させた各種癌細胞を対象に、継続して各種抗がん剤の感受性プロファイリングを実施する。
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