研究課題/領域番号 |
18H02593
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古川 貴久 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (50260609)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 発生分化 / 網膜 / シナプス / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
申請者は、視細胞におけるシナプス形成因子を同定するために、視細胞で優位に発現し、細胞間相互作用に関わるドメインをコードする遺伝子を中心にスクリーニングを行った。細胞間相互作用に関わるドメインはシナプス形成において重要な役割を果たしていることが知られている。 視細胞が完全に欠失するOtx2コンディショナルノックアウト(CKO)マウスと野生型マウスの網膜を用いたマイクロアレイ解析結果の比較から、視細胞に優位に発現すると考えられる遺伝子を選別した。これらの中から機能未知の遺伝子を選別し、さらにこれらの遺伝子がコードする蛋白 質のドメインやin situハイブリダイゼーションによる網膜組織での遺伝子発現パターンおよび発現量を解析し、視細胞におけるシナプス形成 因子の候補遺伝子として機能未知の遺伝子を複数同定した。これらの分子の機能メカニズムの解明を通じて、網膜視細胞-双極細胞間のシナプス形成メカニズムの解明を進めている。具体的には、網膜電図測定(ERG)といった電気生理学的解析、視細胞の軸索末端のマーカーを用いた免疫染色などの組織学的な解析を行った。本年度は、昨年度に引き続き、視細胞に特異的に発現する機能未知の遺伝子およびその関連遺伝子のノックアウトマウスやダブルノックアウトマウスの解析を行い、錐体視細胞の視覚情報伝達に必須であることを見出した。さらに、転写因子Otx2とCrxの視細胞と双極細胞の発生と機能構築における互換性をマウス生体で検証し、それぞれが視細胞と双極細胞の機能構築において分子として固有の機能を有することや進化的な意義を明らかにし、論文、招待講演、学会での発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、網膜神経回路の形成に関わる分子の同定、神経回路の構築メカニズムと個体レベルの視覚機能との関連までを統合的に理解していくことを目的としているが、神経回路の機能に関わる機能未知であった遺伝子を見出し、変異マウスの作製と解析を行っている。また、網膜視細胞と双極細胞の機能構築に関わる分子の機能メカニズムを明らかにしたことからも、おおむね順調に展開していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に引き続き、網膜に発現する候補遺伝子のノックアウトマウスやダブルノックアウトマウスの解析を行う。作製中の抗体を用いた局在解析も行う。さらに、細胞形態やシナプス形成に関わる遺伝子のウイルスベクターによるノックダウンや強制発現による表現型の解析も行う。これらの遺伝子のノックアウトマウスやノックダウン・強制発現させた網膜の組織ならびに機能解析を通じて網膜神経回路機構の形成と機能メカニズムを解明していく。以上の結果をとりまとめ、学会発表ならびに論文として研究成果の発表を行う。
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