本研究ではイオンチャネル蛋白質の1分子構造変化と1分子電流の同時計測システムを確立することを目指し、同時観測システムの開発を行った。観測チャンバーについては、脂質二重膜形成部にパターンニング可能な新素材を採用し、薄層同時計測チャンバーを作製する方針で進めてきた。同時計測のための膜形成デバイスの作製プロセスの検討を行い、膜穴形成のパターンニングプロセスを開発し、改良を進めた。作製したデバイスに脂質二重膜を形成し、電気容量計測を行った。 電気容量とデバイス材料の相関データを取得し、ノイズ源となる電気容量の低減プロセスを開発した。次に、デバイス上への電極のパターンニングプロセスを行った。電極材料、パターンニング法の検討を行い、デバイス上への電極を配置した。このデバイスを用いて、放射線照射実験を行い、照射に伴う電気ノイズレベルの計測と散乱X線の遮蔽方法についての検討を行った。また、観測中に脂質二重膜を形成するための置換システム開発を行った。これらの要素技術を組み合わせることによって同時計測チャンバー作製が可能となった。放射光実験については、観測チャンバーの表面修飾方法、観測プローブ作製法、蛋白質との反応方法を改良することによって、データ取得効率が向上した。また、X線照射条件を最適化することで、同時計測時の損傷を回避することができる。 低ノイズ観測チャンバーの作製は研究分担者である平井義和助教(京都大学)の協力を得て行った。放射光施設でのX線回折実験については研究分担者である岩本真幸教授の協力を得て行った。動態計測に関するデータを学会に報告した。
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