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2018 年度 実績報告書

ミクログリアによる高次脳機能維持機構とその破綻

研究課題

研究課題/領域番号 18H02598
研究機関神戸大学

研究代表者

和氣 弘明  神戸大学, 医学研究科, 教授 (90455220)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードミクログリア / シナプス / 血液脳関門
研究実績の概要

1.私たちはこれまで2光子顕微鏡を用いた生体イメージングによって、ミクロ
グリアがシナプスに1時間に1度約5分程度直接接触することを明らかにしている(Wake et al., 2009)。本研究ではその機能的意義および高次脳機能への寄与を明らかにするために、ミクログリアに特異的にGFPが発現しているマウスの大脳皮質運動野にアデノ随伴ウィルスを用いて、神経細胞にカルシウム感受性蛍光タンパク質(GCaMP6f)および赤色蛍光タンパク質(tdTomato)を発現させ、2光子顕微鏡を用いて生体覚醒下でミクログリアの接触によるシナプス活動の変化を検証すべく、観察を行った。その結果、ミクログリアがシナプスに接触している間、シナプス活動が増強していることを明らかにした。詳細な解析によってミクログリアはシナプス活動の強いシナプスに誘引され、接触することでシナプス活動を増強し、そのシナプスを持つ神経細胞の活動電位の頻度を増加させることがわかった。さらにミクログリアを除去したマウスにおいては、神経細胞集団の活動の同期性が失われ、学習行動が阻害されることが明らかとなった。さらに炎症などによってミクログリアが活性化された際には、ミクログリアの接触によってもシナプス活動は増強しないことが明らかとなり、それを反映してミクログリアの活性化したマウスでは除去したマウス同様、神経細胞集団の活動の同期性が失われ、学習行動が阻害されることが明らかとなった。
2.体循環系の炎症を起こしたマウスにおいて、ミクログリアが血管に接着するように遊走してくることおよびその接着によって、炎症初期には血液脳関門(BBB)とタイトジャンクションを形成し、BBBを保護すること、炎症後期にはミクログリアが貪食能を獲得し、アストロサイトの足突起を貪食することでBBBを障害することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

現在複数の論文が査読中であり、順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

今後の研究推進方策としては、まず運動学習にミクログリアが関与し、さらに神経活動依存的にミクログリアがシナプスに誘引されるのであれば、ミクログリアの動態は運動学習にともなって変化するはずである。さらにこれらの現象が病態モデルで障害されていることを示す。またミクログリア特異的な遺伝子プロファイルを病態モデルで明らかにすることで高次機能異常を担うミクログリアの分子基盤を回路基盤と関連づけて明らかにする。
1.運動学習にともなって生じるミクログリアの動態変化を明らかにするために、レバー引きによる水報酬学習を用いる。ミクログリア特異的にGFPが発現するマウスにこの運動学習を2週間行わせ、その間の動態変化を観察する。得られたミクログリアの動態を数理学的に解析することで、その変化を抽出し、そこからシナプスへの作用を明らかにする。
2.病態モデルとして、統合失調症モデルを用いる。本モデルにおいてミクログリアのシナプス活動修飾メカニズムの変化を抽出するとともに、血液脳関門に対する制御機構の変化も明らかにする。
3.マウントサイナイ大学Anne Schaeferとの共同研究によって、各病態における領域特異的なミクログリアの発現遺伝子変化を抽出する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件)

  • [雑誌論文] Microglia enhance synapse activity to promote local network synchronization.2018

    • 著者名/発表者名
      1.Akiyoshi R, Wake H*, Kato D, Horiuchi H, Ono R, Ikegami A, Haruwaka K, Omori T, Tachibana Y, Moorhouse AJ and Nabekura J.
    • 雑誌名

      eNeuro.

      巻: Oct 25;5(5) ページ: ENEURO.0088-18

    • DOI

      10.1523/ENEURO.0088-18.2018.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Three-dimensional stimulation and imaging-based functional optical microscopy of biological cells2018

    • 著者名/発表者名
      Quan Xiangyu、Kumar Manoj、Matoba Osamu、Awatsuji Yasuhiro、Hayasaki Yoshio、Hasegawa Satoshi、Wake Hiroaki
    • 雑誌名

      Optics Letters

      巻: 43 ページ: 5447~5447

    • DOI

      10.1364/OL.43.005447

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Regulation of myelin structure and conduction velocity by perinodal astrocytes.2018

    • 著者名/発表者名
      3.Dutta D, Woo DH, Lee PR, Pajevic S, Bukalo O, Huffman WC, Wake H, Basser PJ, Sheikhbahaei S, Lazarevic V, Smith JC & Fields RD.
    • 雑誌名

      Proc Natl Acad Sci USA

      巻: Nov 13;115(46) ページ: 11832-11837

    • DOI

      10. 1073/pnas.1811013115

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Microglia mediate non-cell-autonomous cell death of retinal ganglion cells2018

    • 著者名/発表者名
      Takeda Akiko、Shinozaki Youichi、Kashiwagi Kenji、Ohno Nobuhiko、Eto Kei、Wake Hiroaki、Nabekura Junichi、Koizumi Schuichi
    • 雑誌名

      Glia

      巻: 66 ページ: 2366~2384

    • DOI

      10.1002/glia.23475

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cortical astrocytes prime the induction of spine plasticity and mirror image pain2018

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa Tatsuya、Eto Kei、Kim Sun Kwang、Wake Hiroaki、Takeda Ikuko、Horiuchi Hiroshi、Moorhouse Andrew J.、Ishibashi Hitoshi、Nabekura Junichi
    • 雑誌名

      PAIN

      巻: 159 ページ: 1592~1606

    • DOI

      10.1097/j.pain.0000000000001248

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Activity-dependent functions of non-electrical glial cells2018

    • 著者名/発表者名
      Kato Daisuke、Eto Kei、Nabekura Junichi、Wake Hiroaki
    • 雑誌名

      The Journal of Biochemistry

      巻: 163 ページ: 457~464

    • DOI

      10.1093/jb/mvy023

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2019-12-27  

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