研究課題
近年、RNA中に多種多様な化学修飾が見出され、RNA修飾がRNAの局在や安定性を調節することで転写後の遺伝子発現を制御することが明らかになってきた。本研究者はRNAが細 胞内で代謝・分解された後、化学修飾されていたヌクレオシドが修飾を含んだまま細胞外や血中に分泌されることを見出した。そこで本研究は、修飾ヌクレオシドと結合するGPCRの網羅的なスクリーニングならびに細胞内情報伝達機構の解明を通して、ヌクレオシドの新たな生理作用の解明を目的とした。前年度までにN6-methyladenosine(m6A)がアデノシンA3受容体(A3R)を特異的に活性化し、その活性が従来の内在性リガンドである未修飾のアデノシンより10倍以上強いことを発見した。また、m6A刺激がERKやAKTといった細胞内シグナル伝達経路を活性化することを明らかにした。さらに、m6Aがアレルギー反応に重要である肥満細胞に作用し、個体においてアレルギー反応の一種である脱顆粒反応を促進したことが明らかにした。令和1年度では、m6AによるA3Rの活性化の分子機序を明らかにするため、A3Rの立体構造をin silicoでモデリングし、m6Aとの結合様式を検討した。その結果、m6Aのメチル基と相互作用しうるアミノ酸残基を同定した。同アミノ酸残基を人為的に変異させたA3Rは、m6Aによる活性能が顕著に低下した。in silico構造解析に加え、m6Aの細胞外分泌の分子機構について解析した。その結果、過酸化水素や抗がん剤といった細胞傷害性の刺激がリソソームにおけるRNA分解を介して、m6Aの細胞外へ放出を促進することを明らかにした。以上により、RNAに由来するm6Aが刺激に応じて細胞外に放出され、肥満細胞上のA3Rを活性化し、アレルギー応答の強さを調節する液性因子であることが明らかになった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Mol Cell
巻: 81 ページ: 674
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Sci Adv
巻: 7 ページ: eabf3072
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