研究課題
低分子量G蛋白質Arf6は、腫瘍血管新生による腫瘍の増大と癌細胞の転移の両方において中心的な役割を果たしており、Arf6の阻害剤は効果的な抗癌剤となることが期待される。研究代表者らは、in vitroにおいてArf6に特異的に結合してArf6の活性を阻害する創薬リードペプチドを創成している。本研究では、本リードペプチドの腫瘍増殖と癌細胞転移に対する効果を検証するとともに、ペプチドを最適化し、腫瘍増殖と癌細胞転移を同時に阻害する革新的抗癌剤の開発を目指す。本年度は主に、1)細胞膜透過性リードペプチドの作製、2)リードペプチドとArf6の結合様式のNMRによる解析を実施し、以下の結果を得た。上記リードペプチドは、αヘリックス-ループ-αヘリックスをジスルフィド架橋した環状ペプチドであるが、細胞内で効率的に機能させるには、細胞膜を透過すること、および細胞内の還元的な条件下でも安定的に環化している必要がある。昨年度までに、膜透過性を付与するために6個のアルギニン残基を付加したリードペプチドを合成しており、本年度は、このペプチドをチオエーテル結合により環状化する反応条件を検討した。その結果、小スケールにて、目的の環状化したペプチドを合成することに成功した。2)については、Arf6のNMRピークの帰属をほぼ完了し、リードペプチドとの結合により複数のピークシフトを観察した。特にピークシフトの変化が大きかったのは、Arf6のSwitch2領域、および、Arf1との相同性の低い領域のアミノ酸残基であった。Switch2領域は、Arf1の知見から、Arf6においても活性化因子(GEF)との相互作用に関与していることが示唆される。これらの結果は、本リードペプチドが、in vitroにおいてGEFによる活性化をArf6特異的に阻害する作用と合致しており、結合様式決定に大きく近づくものである。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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