研究課題
リンパ管の存在は100年以上前から明らかにされていたにもかかわらず、血管系に比べ研究が遅れ、しばしば『未知なる組織』と呼ばれる。本格的に研究が進みはじめたのはここ10年ほどであり、現在も国内外で次々に新しい発見が続くホットな研究領域である。炎症時のリンパ管新生が、マクロファージ上のPG受容体シグナルによるリンパ管新生因子(VEGF-CおよびD)の産生亢進により誘導されることを見出した。また、下肢あるいは上肢のリンパ性浮腫をもたらすがんの外科的治療に伴うリンパ節郭清マウスモデルを開発し、PGE2がリンパ管新生とリンパ流の増加を介して浮腫を解消することを報告した。PG受容体アゴニストの浮腫治療への応用が大いに期待できる成果であった。また、がんのリンパ行性転移についての研究を進めてきた。PGE2がストローマでのリンパ管新生をEP3/4のシグナルを用いて増強させていること、所属リンパ節へ転移を助長する前転移ニッチェがCOX-2/EP3依存的に形成されることを見いだした。加えて、腫瘍細胞がPGE2をはじめとする炎症性メディエーターを介して、ケモカインシグナルを活性化することにより、免疫細胞や腫瘍関連線維芽細胞を骨髄から動員し、がん進展を亢進することを報告した。さらに、生理活性脂質のトロンボキサンがTP受容体シグナルを介して、炎症時のリンパ管新生を増強していることを見出すことができた。特に炎症巣に浸潤してくる、マクロファージ、Tリンパ球がVEGF-C/Dの発現誘導を介してリンパ管新生を増強していることをTPのfloxマウスを用いて証明することができた。リンパ管新生が、病態の進展、維持に重要な疾患モデルにおいて、役割を持つこと、受容体や生成系をコントロールすることの治療標的として意義を明らかにすることができた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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