研究課題/領域番号 |
18H02608
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐邊 壽孝 北海道大学, 医学研究院, 教授 (40187282)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | EMT / ヒストン / p53 / 上皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、CDH1座へのp53結合依存的・非依存的上皮integrity維持機構に焦点をあて、同様なことが正常上皮細胞や個体でも見られるのか、もしくは、不死化や癌化過程ではじめて誘起されるものなのかを明らかにし、その生物学的意義を解明するものである。 ①ヒト正常乳腺上皮細胞での検討 HMLEはヒト乳腺上皮細胞(HMEC)をSV40 large T antigen(LT)とhuman telomere reverse transcriptase(hTERT)によって不死化したものである。HMLEは不安定な形質を示すことが知られているが、複数の細胞cloneを調製し(一部、R. Weinbergから入手)、p53結合依存性cloneとp53結合非依存性cloneが存在することを見出した。そこで、不死化していないHMECでもこのような多様性が存在するかを確認している。単一細胞解析は困難であり、HMEC(市販品)をcloningし、それぞれのcloneから上皮integrity維持機構多様性が存在するか否かの調査を継続している。 ②上皮integrity多様性の分子基盤 RNA-Seq解析、CDH1座の当該ヒストン修飾状態、さらにはヒストン修飾の元となる細胞内代謝等の解析によって、p53結合依存性あるいは非依存性に影響を与える要因や初発となる因子(群)の特定を継続している。細胞内外の酪酸濃度に依存したCDH1座のヒストンアセチル化がp53結合性を決める要因の一つであることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
増殖の遅いHMEC細胞からクローンを複数調製し、p53結合性を確認する作業に時間を要しているが、本質的な技術的障害ではなく、概ね順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
①前年度から行ってきたヒト乳腺由来正常上皮細胞を用いた解析を引き続き行う。すなわち、不死化していないHMECを用い、上皮性がp53結合依存的か、あるいは非依存的かに関する解析を継続する。増殖の遅いHMEC細胞からクローンを複数調製し、p53結合性を確認する作業となるため、時間を要する。 ②マウス初代培養上皮細胞での検討を行う。正常乳腺上皮細胞をマウス個体から調製し、初代培養したもの、SV40LTにて不死化したものを、各々複数クローンを調製し、ヒト細胞の場合と同様の解析を行い、上皮integrity維持に多様性が存在するか否かの検討を行う。ヒストン修飾解析やRNA-Seq解析に加え、CDH1座のヒストン修飾やp53結合性に影響するacetyl-CoAなどの代謝活性、酪酸濃度や細胞外pHの影響なども含め、解析を行う。
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