研究課題/領域番号 |
18H02609
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武川 睦寛 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30322332)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ストレス顆粒 / RNA顆粒 / 液-液相分離 / ストレス応答 |
研究実績の概要 |
近年、細胞が持つ基本的なストレス適応機構として、ストレス顆粒(SG)の形成が重要である事が見出された。SGは特定のストレス刺激に応答して液-液相分離を介して形成される細胞質内構造体であり、その本体はmRNAおよびRNA結合蛋白質等からなる複合体である。SGの生理機能としては、これまでにストレス環境下で蛋白質の翻訳を停止させ、異常蛋白質の蓄積を防ぐ作用を持つ事が報告されている。また我々は、SGが特定のシグナル伝達分子とも相互作用して、細胞死を負に制御する機能を併せ持つ事を示してきた。さらに近年、SGの形成異常が癌、神経変性疾患、ウイルス感染症などの病因・病態にも深く関与する事が見出され、強く注目されている。しかしながら、SGを構成する分子の全容は未だ解明されておらず、その形成機構や機能に関しても不明な点が多い。そこで本研究では、SGの形成メカニズムや生理機能、およびその破綻と疾患発症との関連を分子レベルで包括的に解明することを目的に解析を進めている。本年度は以下の項目について実験を推進し成果を得た。 新規ストレス顆粒構成分子の同定:ストレス顆粒は液-液相分離によって形成される動的構造体であり、顆粒内分子の流動性が極めて高いため、その精製は困難である。SGの刺激特異的な構成分子を同定するため、近接依存性タンパク質標識法を活利用した新たな手法を開発してSG構成因子の網羅的探索を実施し、新規分子を多数同定することに成功した。 SGの形成機構と生理機能の解明:上述の実験で同定した新規SG構成分子の中から顆粒形成の核となり得る分子を細胞生物学的解析を通して同定した。また、細胞死や免疫応答の制御に関わる複数の分子がSG内に受動的に取り込まれることを見出し、その生理的・病理的意義について解析を行い、新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにストレス顆粒構成分子のプロテオーム解析を完遂し、未知の顆粒構成分子を多数同定することに成功した。また幾つかの新規SG構成分子に関して機能解析を進め、ストレス応答や免疫応答の制御に果たす役割が明らかとなった。さらに、SG形成と癌病態との関連について新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに同定した新規SG構成分子の生理機能を、特に細胞のストレス応答、免疫応答、サイトカイン産生制御などの観点から詳細に解析するとともに、マウスなどのモデル生物を用いて個体レベルでも研究を推進し、ストレス顆粒の形成異常と疾患(癌、ウイルス感染、神経変性疾患など)との関連を明らかにする。
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