研究課題
CD22はシアル酸を認識するSialic acid-binding immunoglobulin-like lectin (Siglec)ファミリーの膜タンパク質で、主にB細胞に発現し、もっぱら同じ細胞に発現する膜分子(シスリガンド)とシアル酸を介して会合している。Proximity labeling法の1つSPPLAT法を用いてCD22の新規シスリガンドの同定を行い、CEACAM1分子がCD22とシアル酸依存的に会合していることを明らかにした。CEACAM1がシスリガンドとしてCD22に会合することの意義を明らかにするため、CEACAM1欠損マウスB細胞におけるCD22の機能を解析したが、正常B細胞と違いは認めず、CEACAM1はCD22のシスリガンドではあるが、CD22の機能には影響しないことが明らかとなった。一方、CD22のシスリガンドがBCR架橋の際のCD22の抑制機能を減弱し、その結果BCRシグナル伝達を増強することが明らかになっている。CD22同士もシアル酸依存的に結合することから、CD22に会合したSHP-1が近傍のCD22を脱リン酸化することで、CD22の機能を減弱させる可能性を検討した。まず、CD22がSHP-1の直接の基質であることを明らかにした。ついで、SHP-1のdominant negative formの発現によりSHP-1の機能を阻害したところ、CD22のシアル酸認識を阻害してもCD22のリン酸化増強が起こらなくなった。これらの結果は、CD22がシスリガンドとしてのCD22のシアル酸を認識することでclusterを形成すると、CD22にリクルートされたSHP-1が近傍のCD22を脱リン酸化することでCD22の抑制機能を阻害することを強く示唆する。
2: おおむね順調に進展している
シスリガンドとして新たにCEACAM-1分子を同定した。CEACAM-1欠損マウスを用いてCEACAM-1がCD22の機能を制御するかの解析を行なったが、CEACAM-1がCD22の機能を制御するという結果は得られなかった。一方、CD22が近傍のCD22をシスリガンドとして認識しクラスターを形成することで、CD22と会合するチロシンホスファターゼSHP-1が近傍のSHP-1を脱リン酸化することで、CD22の抑制性機能を減弱させることを明らかにした。このように、これまで不明であった、シスリガンドがどのようにしてCD22の機能を制御するかを解明することができた。
CEACAM-1がCD22の機能を制御するという知見は得られなかったが、逆方向の制御、すなわちCD22がCEACAM-1の機能を制御するかの解析を行う。また、SPPLAT法と質量分析を組み合わせることで、新規CD22シスリガンドの同定を行い、その機能解明を行うことで、CD22とシスリガンドの相互作用の解明を進める。
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Front. Immunol.
巻: 9 ページ: 820
Front Immunol.
巻: 9 ページ: 2276