研究課題
CD22はα2,6シアル酸を認識する抑制性受容体で、主にB細胞に発現し、もっぱら同じ細胞に発現する膜分子(シスリガンド)とシアル酸を介して会合している。Proximity labeling法の1つSPPLAT法を用いて、TLR関連分子のCD180 (RP105)、糖鎖分子などのエンドサイトーシスに関わるCD205 (DEC105)および接着分子であるCD11a(LFA-1)をCD22の新規シスリガンドとして同定した。また、以前SPPLAT法でCD22のシスリガンドとして同定したCD45とCD22の機能的相互作用についての解析を行なった。CD45は細胞抗原受容体(TCR)を介するシグナル伝達に必須の受容体型チロシンホスファターゼである。一方、CD45欠損B細胞では、B細胞抗原受容体(BCR)を介するシグナル伝達が保たれていた。CD22欠損CD45欠損B細胞およびα2,6シアル酸を欠損するST6GalI欠損CD45欠損B細胞ではBCRシグナル伝達が顕著に減弱していた。この結果は、CD22がシスリガンド認識によりBCRシグナル伝達を増強することを示す。一方、CD22によるα2,6シアル酸認識を阻害する化合物を加えてもCD45欠損B細胞のBCRシグナル伝達は減弱しなかった。この結果から、CD22によるBCRシグナル増強作用は、成熟B細胞で起こっていることではなく、B細胞分化過程での制御に基づくことが示唆された。実際、CD45欠損B細胞ではBCR発現が顕著に増強するが、CD22欠損CD45欠損B細胞およびST6GalI欠損CD45欠損B細胞ではBCR発現の増強は見られない。これらの結果から、CD22がα2,6シアル酸を認識することで、B細胞分化過程でのBCR発現を制御し、その結果成熟B細胞でのBCRシグナル伝達を増強するという分化過程での制御の仕組みを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
Proximity labelingの1つSPPLAT法によりCD22の新規シスリガンドを同定し、その機能解析を進めた。また、以前CD22のシスリガンドであることを明らかにしたCD45を欠損するB細胞を用いた解析により、抑制性受容体であるCD22がB細胞の分化過程でBCR発現レベルを制御することで、BCRシグナル伝達を増強するという予想外の結果を得ることができた。これまで、細胞の分化過程での制御が細胞のシグナル伝達に影響を及ぼすことが認識されてきたが、そのメカニズムの1つを明らかにしたもので、重要な成果と考えられる。
これまでの研究で、CD22のシスリガンドの同定と機能解析について、多くの知見を得ることができたが、さらにその解明を進めるために、今年度新たにCD22のシスリガンドとして同定したTLR関連分子のCD180 (RP105)、糖鎖分子などのエンドサイトーシスに関わるCD205 (DEC105)および接着分子であるCD11a(LFA-1)の機能がCD22によってどのように制御されるのかを明らかにする。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Immunol. Med.
巻: 42 ページ: 108-116
J. Immunol.
巻: 202 ページ: 2546-2557