研究課題/領域番号 |
18H02612
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
花房 洋 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (00345844)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | LRRK1 / EGFR / Rab7 |
研究実績の概要 |
メンブレントラフィックは細胞内で物流網を形成し、環境に応じた適切な細胞応答を可能にしている。我々はこれまでROCOファミリーキナーゼLRRK1が、上皮成 長因子(EGF)受容体を含むエンドソームの輸送・成熟を制御することを明らかにしてきた。一方ファミリー分子LRRK2は、家族性パーキンソン病原因遺伝子とし て同定され、その後の解析からメンブレントラフィックやオートファジーに機能していることが報告されてきた。しかしその作用機構は未だよくわかっていな い。最近我々は、LRRK1の基質としてRab7を同定した。またLRRK2も、Rab8、10、12などRabファミリーを基質とすることが報告されえた。興味深いことにLRRK1/2はRabファミリー間で保存されたセリン・スレオニンをリン酸化し、Rabとエフェクター分子との結合を制御していることが明らかとなってきた。 そこで本研究課題では、Rabを介したエンドソームとオートファゴソームの成熟機構に注目し、LRRK1/2によるメンブレントラフィック制御を明らかにすべく研究を行った。 昨年度までの研究から、LRRK1がEGFR細胞内輸送においてRab7をリン酸化し、EGFRを含むエンドソームのリソソームへの輸送を促進していることを明らかにした。さらにParkin依存的なマイトファジーにおいて、LRRK1がRab7をリン酸化し、損傷ミトコンドリアの除去に重要なことも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、LRRK1にフォーカスを当て研究を遂行した。その結果、LRRK1がRab7をリン酸化し、そのエフェクター分子RILPとの結合を促進し、Dynein依存的な輸送を促進することを明らかにした。またLRRK1が、Parkin依存的なマイトファジー(損傷ミトコンドリアを除去する選択的オー トファジー)時に、Rab7をリン酸化し、損傷ミトコンドリアの除去に必須であることを見出した。LRRK1は、オートファジー開始キナーゼULK1の下流で活性化し、Rab7のリン酸化を介してマイトファゴソーム形成に機能していることを明らかにした。最近、LRRK2がRab10をリン酸化することで、マイトファジーを負に制御していることが報告された。LRRK1とLRRK2は、Parkin依存的なマイトファジーの進行において、それぞれ反対の役割(LRRK1がpositive regulatorでLRRK2がnegative regulator)を果たしている可能性が明らかとなってきた。以上の結果を踏まえ、本研究課題は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の点に関し研究を行っていく。 (1)LRRK1によるメンブレントラフィック制御:我々はLRRK1が、EGFRのエンドソーム内腔への取り込みにも機能し、EGFRシグナルをダウンレギュレーションしていることを明らかにしている。そこでメンブレントラフィックとシグナル伝達との協調機構について、LRRK1と相互作用する分子を中心に解析を進める。これまでLRRK1と結合する分子として、チロシンフォスファターゼを同定しており、今後は、このフォスファターゼとの関係について解析を行う。また、SplitGFPを用いた解析から、小胞体―エンドソームコンタクトサイトにおけるLRRK1の機能を明らかにする。 (2)LRRK1/2によるマイトファジー制御:LRRK1によるParkin依存的なマイトファジー制御機構について、その分子機構を明らかにする。これまでLRRK1のキナーゼ活性がマイトファジーに重要なことを明らかにしているが、マイトファジー時に、LRRK1がどのように活性化するのか検討する。特に、ULK1複合体との関係にフォーカスし解析を行う。
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