メンブレントラフィックは細胞内で物流網を形成し、環境に応じた適切な細胞応答を可能にしている。我々はこれまで、ROCOファミリーキナーゼLRRK1が、上皮成長因子(EGF)受容体を含むエンドソームの輸送・成熟を制御することを明らかにしてきた。一方ファミリー分子LRRK2は、家族性パーキンソン病原因遺伝子として同定され、その後の解析からメンブレントラフィックや選択的オートファジーの一つマイトファジーに機能していることが報告されてきた。しかしその作用機構は未だよくわかっていない。我々を含めた最近の研究から、LRRK1/LRRK2は低分子量Gタンパク質Rabファミリーの保存されたアミノ酸をリン酸化し、Rabとエフェクター分子との結合を制御していることが明らかとなってきた。本研究課題では、Rabを介したEGFR細胞内トラフィックと、マイトファジー制御機構に注目し、LRRK1/2によるメンブレントラフィック制御を明らかにすべく研究を行った。 昨年度までの研究から、LRRK1とPTENがそれぞれキナーゼとフォスファターゼとしてRab7 Ser-72をリン酸化・脱リン酸化し、EGFRを含むエンドソームのダイニン依存的なリソソームへの輸送を制御していることを明らかにした。興味深いことに最近、Rab7がマイトファジーにおいて損傷ミトコンドリアの除去に重要なことが報告された。そこでLRRK1が、Rab7 Ser-72のリン酸化を介してマイトファジーに機能していないか検討した。その結果、LRRK1がオートファジー開始キナーゼULK1の下流で、Parkin依存的なマイトファジーに重要なことを明らかにした。さらにLRRK1は、損傷ミトコンドリア上でRab7をリン酸化し、隔離膜の形成開始に重要なことを明らかにした。
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