研究実績の概要 |
生殖細胞は次世代へのゲノム情報の伝播を担う唯一の細胞系譜である。哺乳類では、生殖細胞の発生初期、即ち始原生殖細胞の発生期にゲノムワイドなエピゲノム変化(メチル化DNAの減少とヒストン修飾の変化)が観察される。このエピゲノム変化は、おそらくその後の生殖細胞発生を正常に行うために不可欠な分子イベントであると予想されるかが、しかし生殖細胞発生過程において果たす役割の分子的理解は未だ不十分である。 本研究ではこれまで、マウスES細胞を起点とした雄性生殖細胞発生の試験管内再構成系(Hayashi et al., 2011、Ohta et al., 2017、Ishikura et al., 2016)を用いて、ES細胞、エピブラスト様細胞、始原生殖細胞様細胞や精子幹細胞を含む各分化段階の細胞種を用いてChIPseq、ATACseq、Hi-C解析などのデータ取得を行ってきた。令和3年度は、これらのデータと、既報のメチル化DNA(PBAT)データ(Shirane et al., 2016、Ohta et al., 2017、Ishikura et al., 2016)、および質量分析法によるエピゲノム修飾基の定量比較解析データ(Benjamin Garcia博士と共同研究)を合わせて、統合解析を推進した(McGill大学ゲノムセンターとの共同研究)。これらの解析から、始原生殖細胞発生過程で誘発されるエピゲノムリプログラミング過程、さらにその後精原細胞分化過程で誘発されるエピゲノムプログラミング過程における核内クロマチン変化(Nucleome dynamics)の全容理解に迫る包括的知見が得られた。これらの結果をまとめて論文投稿を行った(Nagano, Hu et al., 査読中)。
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