研究課題/領域番号 |
18H02616
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
金川 基 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (00448044)
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研究分担者 |
萬谷 博 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (20321870)
田村 純一 鳥取大学, 農学部, 教授 (30221401)
片野坂 友紀 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (60432639)
山口 芳樹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (90323451)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖鎖 / ジストログリカン / 筋ジストロフィー / リビトールリン酸 / フクチン |
研究実績の概要 |
リビトールリン酸糖鎖は我々が発見した新型の翻訳後修飾体で、その異常は筋ジストロフィーや精神発達遅滞などの疾患に直結することから、病態生理的に重要な役割を担っていると考えられる。我々はこれまで、リビトールリン酸糖鎖の修飾に関わる4種の遺伝子機能(フクチン、FKRP、ISPD、TMEM5)を明らかにしてきたが、更に、この修飾に関わる機能未知の遺伝子Xを見出している。本研究ではリビトールリン酸修飾における遺伝子Xの機能を明らかにすること、そして、筋・心筋組織におけるリビトールリン酸の生理的意義を、リビトールリン酸修飾酵素を欠損させたマウスを用いて明らかにすることを目的とする。本年度は遺伝子X欠損細胞を用いて、リビトールリン酸の修飾異常に至る分子基盤について解析をすすめ、遺伝子Xの下流に遺伝子Yが存在すること、そして遺伝子Yの欠損によってもリビトールリン酸の修飾異常が生じることを確認した。現在、遺伝子XとYの機能解析を進めている。また、リビトールリン酸の生理的意義を明らかにするため、心筋選択的なフクチンconditional knock-out (cKO)マウスを用いて心不全病態を明らかにした。具体的には、フクチン欠損心臓では血行動態負荷に対する適応的肥大応答が減弱していること、細胞レベルでは心筋細胞機能の低下と細胞内骨格系の構造異常が生じていることを示した。この病態機序にもとづいた新規の治療戦略の提唱に至った。また、フクチンやFKRPの酵素反応の詳細なメカニズムを構造生物学的な研究も含め明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子Xの機能解析については、ゲノム編集法で作出した欠損細胞を用いて、その下流に位置する遺伝子Yを見出し、リビトールリン酸の修飾基盤の解明に前進した。リビトールリン酸の生理的意義については、cKOマウスを用いて病態機序を解明し、それに基づく新規治療法の提案に至った。いずれも計画通りに順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子XとYの異常が、どのようにリビトールリン酸の修飾異常を引き起こすか、その要因を、機能や局在の解析を進める。リビトールリン酸の供与体であるCDP-リビトールは細胞質で生合成されるが、それを基質とするフクチンとFKRPはゴルジ酵素である。ゴルジ内腔にCDP-リビトールが輸送されるメカニズムを明らかにする。また、リビトールリン酸欠損マウスについては、新たに見出した治療戦略の有効性を検証していく。
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