研究実績の概要 |
前年度までの研究実施により、TJを形成できない細胞に対してはその細胞が生細胞であっても、その細胞に接する面にミオシンが集積することを確認した。これによりTJを形成していることが、ミオシンの集積を抑制していることがわかった。また、隣接した細胞の死に伴って局在の変化が見られるタンパク質を探索したところ、死/生細胞間に濃縮が見られたものはRock2, shroom3であることがわかった。本年度はさらにその変化の詳細と、その変化をもたらすシグナル系について解析を進めた。 TJの構成タンパクについて細胞が死んだ時の変化を蛍光抗体法にて解析した。任意の細胞を殺傷するために顕微鏡下でのレーザーの照射を行い、修復運動が誘起されていることは蛍光ミオシンを発現する細胞を使うことによって確認した。照射後一定時間、修復運動を行わせ、固定、蛍光染色を行った。ZO-1の変化について詳細に解析した。ZO-1が単純に消失することは全くなく、一見、変化がないか、むしろ濃縮するようであった。詳細にみるとMDCK II細胞の場合、連続した細い線状であった分布だったものが、分断され局所的に凝集し、凝集によりより濃縮したものが断続的に見える、という分布に変わっていた。ZO-1を線状に配置させ続ける機構はTJを挟む二つの細胞が協調して機能させており、一方が死ぬことにより、生細胞側単独では連続性を保つことができなかったと解釈している。またこの分布変化が、その後のミオシン活性化と関わる可能性が想像される。 ZO-1についてビオチン化酵素との融合タンパクを作り、内在性のものと同じ挙動をすることを確認し、ビオチン化された、近隣のタンパク質を同定したところ、Rho GEFの一つであるARHGEF11が見つかった。TJ近くのミオシン活性化につながる可能性があり、この分子の挙動、機能についての解析が重要と考えられる。
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