研究課題
細胞のエネルギー代謝恒常性には、多様な環境下におけるエネルギーの合成と消費のバランスが重要である。その大半は、細胞質側のミトコンドリアでATPが合成され、核側の核小体によるリボソーム形成とタンパク質合成でATPが消費されている。このバランスを制御する機序については不明な点が多いが、これらに関わる遺伝子発現がエピゲノムによって協調的に調節されている可能性がある。本研究では、核小体とミトコンドリアの連動性に着目し、新規のエピゲノム制御機構を明らかにすることを目的とした。具体的には、特異的なsiRNAライブラリーと各種細胞株(がん細胞株、線維芽細胞)を用いて、単独阻害で核小体とミトコンドリアの構造・機能がともに変化する15分子を選出し、その機能解析、相互作用(複合体)の解析、ChIP-Seqによる標的遺伝子の網羅的解析を実施した。とくに、ヒストンH4K20モノメチル化酵素SETD8/PR-Set7が細胞老化に関連して、核小体とミトコンドリアに関わる遺伝子群の発現を調節し、代謝リモデリングにおける役割を報告した。また、ヒストンH3K4脱メチル化酵素LSD1が骨格筋分化において、またLSD2が褐色脂肪細胞・ベージュ細胞の分化において、エピゲノムとミトコンドリアを連動させる新たな因子であることを解明した。
1: 当初の計画以上に進展している
エピゲノムとミトコンドリアを機能的に連結する因子について、新知見を得ている。とくに、ヒストンH4K20メチル化酵素SETD8/PR-Set7およびヒストンH3K4脱メチル化酵素LSD1/LSD2など、細胞制御とミトコンドリア機能に関わる遺伝子群の発現を調節する機序に関する最先端の研究成果が出ているため。
本研究は、当初の計画以上に進展してきたため、今後も引き続き研究を推進する。
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