研究課題/領域番号 |
18H02620
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
香城 諭 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 上級研究員 (70360542)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胸腺細胞分化 / CD4 / RUNX / Silencer / enhancer RNA |
研究実績の概要 |
Runxファミリー分子は、血液細胞の分化に極めて重要な役割を担う転写因子である。Runxを介した遺伝子発現制御機構の一つに、Runx依存性遺伝子サイレンサー(以下サイレンサー)による標的遺伝子の発現抑制があるが、その制御機構の分子実体についてはほとんど解明されていない。本研究では、Cd4遺伝子領域をモデル遺伝子座とし、新規の遺伝子改変マウスの作出によって配列の異なるサイレンサー間の活性比較を可能にした。
サイレンサー特異的なインタラクトーム解析を実施するためにiChIPマウスを作出し、サイレンサーに近接する遺伝子領域を確認した。その結果、サイレンサー活性が高く遺伝子発現を抑制する状況において、サイレンサー部とCd4 proximal enhancer(以下エンハンサー)領域のゲノム近接が認められ、サイレンサーによる遺伝子発現の抑制は、プロモーターではなく、エンハンサーを対象として誘導されるものであることが強く示唆された。
サイレンサーによるエンハンサーの制御に関して検討を加えた結果、エンハンサー部位のヒストン修飾は変わらないにも関わらずエンハンサーRNAの発現量がサイレンサーによって強く抑制されることを見出した。エンハンサーRNAの発現を人為的に低下させる遺伝子改変マウスを作出し、エンハンサーの標的となるCd4遺伝子の発現を確認したところ、エンハンサーRNAの低下によってCd4遺伝子の発現も低下することを確認し、サイレンサーによるエンハンサーRNAの抑制が、サイレンサーによる遺伝子発現抑制の実体である可能性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、エンハンサーRNAの重要性を確認するために、RNAiにてエンハンサーRNAをノックダウンし、その機能を評価する予定であった。しかしながら、核内で機能するエンハンサーRNAのノックダウンにおいて、基本的に核外で機能するRNAi技術は適用困難であることが判明し、その代替策として遺伝子改変マウスによる評価に切り替えた。
新規の遺伝子改変マウスを作出の結果、エンハンサーRNAの機能を確認することに成功した。細胞株を用いたRNAi実験に比較しマウス個体を使用することにより、より生理的な環境下でのエンハンサーRNA機能の解析が可能となった。その結果、本申請課題において予想以上の進捗をもたらしたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
サイレンサー/RunxによるエンハンサーRNA発現制御について、その分子機構を明らかにする。現在までのところ、RNAポリメラーゼII (PolII) の活性制御がサイレンサー/Runxによって担われている可能性を示唆する予備的データを得ている。今後は、マウス胸腺細胞株1200Mを使用し、RNAiを用いた検討によってエンハンサーRNA発現におけるPolII活性の制御機構を明らかにし、サイレンサー/Runxとの関係性確認を通してエンハンサーRNAの発現制御機構を明らかにしていく。
また、エンハンサーRNAの発現を低下させる新規遺伝子改変マウスについてより詳細な検討を行い、エンハンサーRNAの機能についての解明を試みる予定である。
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