研究課題
高等生物は多様な外的・内的ストレスによって生じるDNA損傷を速やかに認識して、DNA修復、細胞周期停止、アポトーシスなどの細胞応答を介して遺伝情報を防護している。DNA二本鎖切断応答を担うATMシグナル経路内の遺伝子変異は、「運動失調」または「小頭症」を発症する。しかし、これらの遺伝子変異が、異なる神経病態を生み出す機構は不明な点が多い。我々は、ATM経路を構成するDNA二本鎖切断修復酵素をコードするMRE11遺伝子の変異パターンによって、「運動失調」と「小頭症」の病態が選別される臨床的事実を見出した。本研究では、ATMシグナル経路の遺伝性疾患における神経症状の異質性が生じる機序を解明することを研究目的としている。そこで、ゲノム編集技術を用いて、MRE11遺伝子の疾患特異的変異をマウスに導入したモデル実験系の作製を試みた。2020年度には、ヒトで小頭症を引き起こすMRE11遺伝子のスプライシング変異とミオクローヌスの原因となるMRE11のA47Vミスセンス変異を導入したホモマウスを作出した。MRE11遺伝子のスプライシング変異は、ヒトと異なり、小頭症を引き起こさなかったが、MRE11 A47Vミスセンス変異ホモマウスはミオクローヌス様症状を示した。また興味深いことに、MRE11 A47Vミスセンス変異ホモマウスの雄は生殖能力を示すのに対して、雌は不妊となることが示唆された。MRE11 A47Vミスセンス変異ホモマウスは、神経変性疾患研究だけでなく生殖研究における新たな疾患モデルとして有用であることが示された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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