研究課題/領域番号 |
18H02625
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中井 彰 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60252516)
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研究分担者 |
藤本 充章 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80359900)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱ショック / 転写 / RNAポリメラーゼII / 転写開始前複合体 / 染色体分配 |
研究実績の概要 |
1)SGO2のHSP70転写誘導における効果:マウス胎児線維芽細胞(MEF)等の内在性SGO2をノックダウンすることで温熱、プロテアソーム阻害剤、アミノ酸アナログなどのタンパク質毒性ストレスに曝した際のHSP70の誘導が減弱することが分かった。 2)SGO2のHSP70プロモーターへのHSF1依存的なリクルートの解析:免疫沈降法によって、熱ストレス条件下でHSF1とSGO2が相互作用することを示した。クロマチン免疫沈降(ChIP)法により熱ストレスに伴ってHSF1-SGO2複合体がHSP70プロモーターへ集積することが分かった。さらに、内在性HSF1をSGO2と相互作用しないリン酸化部位変異HSF1(HSF1-S326A)に置換すると、SGO2の集積が見られなかった。つまり、HSF1依存的なSGO2のHSP70プロモーターへのリクルートが明らかとなった。 3)SGO2の既知の機能とHSP70転写誘導との関連:SGO2はオーロラBキナーゼやタンパク質脱リン酸化酵素PP2Aによって調節を受けている。。そこで、これらと相互作用しない変異SGO2に置換した際の熱ストレスによるHSP70転写誘導への効果を調べたところ影響がなかった。 4)SGO2が転写を誘導する機構の解明: SGO2と相互作用するタンパク質の質量分析による同定を行い、Pol IIの主要な構成因子であるRpb1とRpb2が飛び抜けて同定ペプチド数が多いことをつきとめた。また、HSF1-SGO2-Pol IIの相互作用を共免疫沈降法で確認できた。さらに、SGO2をノックダウンすることでHSP70プロモーター上へのPol IIの集積が減弱した。つまり、HSF1-SGO2がPol IIのリクルートを促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SGO2がタンパク質毒性ストレスによるHSP70転写誘導を促進することが明らかになった。その機構の解析から、SGO2がHSF1依存的にHSP70プロモーターへリクルートされていた。また、この新しいSGO2の機能は、既知の染色体分配機能とは関連していないこともわかっら。さらに、SGO2が転写を誘導する機構を調べたところ、SGO2はPol IIのプロモーター上へのリクルートを促進することが示唆された。以上の通り、予定した実験をおよそ遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、HSF1-SGO2複合体がPol IIのリクルートを促進することを検証すると同時に、その機構のプロテオスタシス制御における効果を以下の実験によって明らかにする。 ① これまでにSGO2と相互作用しなしHSF1変異体を作成しており、新たにPol IIと相互作用しないSGO2変異体を作成する。細胞内の内在性HSF1およびSGO2をそれぞれ相互作用変異体に置換して、HSP70プロモーター上へのHSF1、SGO2、及びPol IIのリクルートをChIP法で調べる。また、Pol IIと結合しない変異SGO2に置換した場合のHSP70プロモーター上へのPol II、クロマチン再構成因子(BRG1を含む)、Mediator等のリクルートを調べる。 ② HSF1-SGO2複合体のプロテオスタシス容量、神経変性疾患等に与える効果を調べる。MEF細胞の内在性HSF1およびSGO2をそれぞれと相互作用しない変異体に置換した際に、熱ストレス時を含むタンパク質毒性ストレス条件下で一群のHSP誘導が低下し、不溶性ユビキチン化タンパク質が蓄積し(プロテオスタシス容量低下のマーカー)、細胞生存率が低下することを確認する。
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