研究実績の概要 |
自己免疫疾患において、B細胞は自己抗体や炎症性サイトカイン産生により病態を 悪化させることが広く知られている。興味深いことに、全てのB細胞が免疫反応を正に制御 するわけではなく、負に制御する、つまり、自己免疫病を抑制するB細胞(制御性B細胞) が同定され、B細胞の新たな機能として非常に注目されている。特に、抗炎症性サイトカイ ンIL-10を産生するB細胞は、様々な自己免疫病を抑制することが示されているが、その分化機序や病態への関与は不明な点が多い。しかし、我々は、「プラズマブラスト」と呼ば れるB細胞サブセットがIL-10産生B細胞の実体であること、ならびに、I型インターフェロンがヒトIL-10産生制御性プラズマブラストの誘導に必須であることを発見している。そこで、本研究では、I型インターフェロンで誘導される自己免疫を増悪化させる“炎症性プラズマブラスト”と抑制する“制御性プラズマブラスト”の性状を解明し、そのバランス変化が疾患発症および増悪・寛解の指標となる可能性を検討することにより、I型インターフェロンによる自己免疫疾患病態制御の仕組みを理解することを到達目標とする。 当該年度は、ヒト末梢血由来B細胞をin vitroの刺激(IL-2, IL-6, CpG, I型インターフェロン)でプラズマブラストが誘導され、そのなかのCD27low CD38+分画が特異的にIL-10を産生することから、本サブセットの細胞表面マーカー、B細胞レセプターのアイソタイプ、抗体産生などの性状を詳細に解析した。さらに、網羅的遺伝子発現解析により特異的遺伝子発現の同定に取り組んでいる。I型インターフェロンと様々なTLRアゴニスト及びサイトカインの組み合わせによって、プラズマブラス分化誘導効率や特徴的違いがあることが判明した。
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