研究課題
2019年度は前年度に引き続いて、扁桃組織やミクリッツ病(IgG4関連疾患)の顎下腺組織などの臨床検体に検出されるDP-Tfh細胞(CD4+CD8+)の機能解析が進められた。(1)扁桃組織のDP-Tfh細胞とTfh細胞(CD4+CD8-)のマイクロアレイ解析から得られた結果に基づき、多検体を使って定量RT-PCRやフローサイトメトリーにより検証した。有意な差をもってDP-Tfh細胞に高発現している遺伝子として、CD8A、CD8B、IFNG、GZMA、GZMB、CD70、Bob1(POU2AF1)、FAIM2(LFG2)、CCL3などが示された。また扁桃組織とミクリッツ病顎下腺組織のDP-Tfh細胞のトランスクリプトームを比較検討したところ、CCL19、MUC4やHLA-DRなどの遺伝子がミクリッツ病のDP-Tfh細胞に高発現していた。加えてDP-Tfh細胞と制御性Tfh細胞(Tfr細胞)との割合がミクリッツ病の臨床パラメータと相関していたことから、血清IgG4の異常高値や線維化にこれらのリンパ球が関与している可能性が示唆された。(2)共培養実験からDP-Tfh細胞はB細胞ヘルパーの機能を保持していることから、CD70がCD28との会合によるT細胞、B細胞の機能制御が行われているかもしれない。通常のCTLと比較するとCD8の発現レベルは低く、DP-Tfh細胞はCD8(lo)Tfh細胞と表現したほうが適切であるので、こうした観点からもDP-Tfh細胞の機能的意義、病的意義についてさらに検討を深めたい。(3)CD4-Cre-Bob1(fl/fl)マウスの研究から、Bob1がTfh細胞の連関認識の調節を担っている可能性や、短期型あるいは長期型のメモリーTfh細胞としての機能維持への関与を検討する必要性がでてきた。このマウスを用いて(1)の遺伝子群とBob1の関係性についても検証したい。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に続き2019年度は研究代表者(一宮)が本研究課題の実施と総括を担当し、当教室の亀倉講師の指導のもと、大学院生の村山、池上、柳、神谷、MD-PhDコース生の亀井、松本、三好、村本、中田が本研究に参加した。扁桃やIgG4関連疾患の顎下腺組織に局在するDP-Tfh細胞の研究を重ね、リンパ球サブセットと臨床パラメーターとの関係性が明らかとなった。こうした結果を踏まえ、Tfr細胞との関連性を考慮してDP-Tfh細胞の機能的意義の検討を進めることにより、病的線維化のメカニズムやIgG4へのクラススイッチ促進過程の解明につなげたい。また共培養実験からDP-Tfh細胞はオーセンティックなTfh細胞よりもB細胞の抗体産生能を影響を及ぼす可能性があり、今後の研究展開が待たれる。DP-Tfh細胞に高発現するBob1の機能解析については、CD4(Cre)-Bob1(fl/fl)マウスを用いた研究が進められ、興味深い結果が得られている。Tfr細胞との関係については、CD4(Cre)-Bob1(fl/fl)マウスとFoxP3(GFP)ノックインマウスから樹立したFoxP3(GFP)-CD4(Cre)-Bob1(fl/fl)マウスを使った研究の準備が整い、一部の解析は既に行われている。
今後の研究の推進の方策としては、研究課題申請の際にかかげた研究計画を引き続き推進してゆく。共培養実験を重ねた結果、DP-Tfh細胞の抗体産生プログラムへの影響について理解が深まってきた。その一方で、TCR刺激によるグランザイムなどの分泌顆粒がどのような細胞をターゲットとしているのか、またそれに伴う免疫制御システム全体における位置付けついては、十分に解明されていない点が多い。マウスモデルによる解析も同時に進め、DP-Tfh細胞の機能解析とともに正常組織や病変組織における機能的意義を明らかにしたい。
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