研究課題
本研究では免疫異常が関わる難治性疾患の克服に向け、得られた結果が臨床応用につながることを目指し、臨床検体を直接的に用いた研究を推進した。慢性線維性炎症を伴うIgG4関連涙腺唾液腺炎(IgG4-DS、ミクリッツ病)の病変組織の解析から、抗体産生プログラムを制御する胚中心型濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)の新たな調節機構が見出され、CD8と細胞傷害関連因子(グランザイム、パーフォリン、CRTAM、GPR56、EOMESなど)を発現する胚中心型Tfh細胞の存在が明らかとなった。このTfh細胞はCD4とCD8の双方を発現することからdouble-positive Tfh 細胞(DP-Tfh細胞)あるいは細胞傷害性CD8(lo)Tfh細胞として解析を進めた。昨年度のトランスクリプトーム解析に基づくパスウエイ解析などの結果を踏まえ、DP-Tfh細胞の起源としてCD4のみを発現する胚中心型Tfh細胞(SP-Tfh細胞)が示唆され、種々のサイトカインシグナルが関連していると考えられた。今年度の研究から、扁桃由来のTfh細胞をIL-2とIL-7の存在下で培養すると、その中にDP-Tfh細胞の表現系を示す細胞集団が現れた。IL-7の遺伝子発現と蛋白発現の解析から、IgG4-DSの病変組織はIL-7が高発現していた。またDP-Tfh細胞はCD70を発現し、共培養研究からCD27(+)メモリーB細胞を標的とする可能性が示唆され、DP-Tfh細胞は胚中心型Tfh細胞のサブセットとして、慢性炎症環境下で記憶B細胞の機能を阻害するフィードバック機構を担っているかもしれない。最近のCOVID-19に関する研究から、重症患者では細胞傷害性Tfh細胞が高頻度に認められており、本研究は免疫関連疾患の病態背景のみならず、重症感染症における生体防御機構としての意義にも注目される。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Modern Rheumatology
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