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2019 年度 実績報告書

ドライバー変異に依存しない肺腺癌における細胞の分化と生存の統合的制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18H02634
研究機関自治医科大学

研究代表者

仁木 利郎  自治医科大学, 医学部, 教授 (90198424)

研究分担者 萩原 弘一  自治医科大学, 医学部, 教授 (00240705)
遠藤 俊輔  自治医科大学, 医学部, 教授 (10245037)
佐久間 裕司  札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10364514)
吉本 多一郎  自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20634166)
松原 大祐  自治医科大学, 医学部, 准教授 (80415554)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード肺腺癌
研究実績の概要

EGFRなどのドライバー変異のない肺腺癌のなかに,肺のマスター遺伝子TTF-1 (thyroid transcription factor-1)の発現消失とともに消化管上皮への異常な分化をみる一群があるが、その分化異常の分子機構の詳細は不明である.本年度は,消化管上皮の修復因子である分泌タンパクTFF-1 (Trefoil Factor Family 1)に着目して解析を行った.
外科的に切除された肺腺癌238例を検討に用い, 免疫染色によりTFF-1の発現を検討した.TFF-1陽性の症例は31例(13%)に認められた.組織亜型ごとのTFF-1陽性頻度は,浸潤性粘液癌, 腸型腺癌, コロイド腺癌ではほぼ全例陽性であるのに対し,一般的な組織亜型である腺房型, 乳頭型, 充実性では5-20%の陽性率であり,さらに微小乳頭型, 肺胞置換性増殖型, 微小浸潤腺癌および上皮内腺癌では全例陰性であった.TFF-1 の発現は,他の消化管上皮のマーカーであるHNF4-α と MUC5AC と相関し (ともにP < .0001) ,TTF-1/NKX2-1とは逆相関の関係にあった (P < .0001). ドライバー変異を検索しえた症例中,TFF-1陽性例はKRAS変異の頻度が高く (12/24, 50%), EGFR, ALK変異を示す例は1例もなかった.TFF-1の発現はSTAS (spread through air space)と相関し,進行期において予後不良因子であった.TFF-1陽性の肺腺癌細胞A549においてTFF-1の発現をノックダウンすると,細胞増殖,ソフトアガー上でのコロニー形成が抑制され,アポトーシスの増加も認められた.以上,TFF-1は消化管上皮への異常な分化を示す肺腺癌のバイオマーカーであり,かつ治療標的ともなりうる可能性をもった分子であると考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ドライバー変異のない肺腺癌のなかに,肺のマスター遺伝子TTF-1 (thyroid transcription factor-1)の発現消失とともに消化管上皮への異常な分化をみる一群がある.本年度は,この一群のバイオバーカーとして,消化管上皮の修復因子である分泌タンパクTFF-1 (Trefoil Factor Family 1)を同定し、その臨床病理学的意義を明らかにするとともに、細胞株を用いた実験により,生物学的な意義についても明らかにすることができた.

今後の研究の推進方策

肺腺癌において,消化管上皮への異常な分化を制御する候補分子としてHNF-4A (hepatocyte nuclear factor-4A)をはじめとするHNF familyがある.
本年度は,肺腺癌野中でも、以前報告したnon-TRU型43例 (Matsubara et al. Cancer Sci 2017, PMID: 28677170)について,HNF family memberの発現を免疫染色により解析し,(1) 組織形態, (2)消化器上皮の分化マーカーの発現, (3)ゲノム異常,との関係を明らかにする.
次いで,自治医大の症例解析とあわせて,公開データベースによる共発現パターンの解析や予後因子解析を行い,より強固なデータを構築する.使用するデータベース,ウェブツールは,The human protein atlas (https://www.proteinatlas.org/), Kaplan Meier-plotter (https://kmplot.com/analysis/) などである.
HNF4 family 分子の生物学的意義の解析には,遺伝子発現, コピー数,ドライバー変異などのデータをすでに取得した肺癌細胞株40種類(Matsubara et al. Am J Pathol 2010, PMID: 20934974)のなかから,目的とする形質に合致する細胞株を選び実験に用いる.レンチウイルスベクターを用いて,HNF family遺伝子の発現をshRNAにより抑制あるいは強制発現し,細胞の分化形質,増殖,アポトーシスへの効果を調べる.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Reciprocal Expression of Trefoil factor-1 and Thyroid Transcription factor-1 in Lung Adenocarcinomas.2020

    • 著者名/発表者名
      Matsubara D, Yoshimoto T, Soda M, Amano Y, Kihara A, Funaki T, Ito T, Sakuma Y, Shibano T, Endo S, Hagiwara K, Ishikawa S, Fukayama M, Murakami Y, Mano H, Niki T.
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 111 ページ: 2183-2195

    • DOI

      10.1111/cas.14403.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] EGFR-independent EGFR-mutant lung adenocarcinoma cells depend on Bcl-xL and MCL1 for survival.2020

    • 著者名/発表者名
      Hirai S, Tada M, Yamaguchi M, Niki T, Sakuma Y.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 526 ページ: 417-423

    • DOI

      10.1016/j.lungcan.2019.05.014.

    • 査読あり
  • [備考] 自治医科大学統合病理学部門ホームページ

    • URL

      http://www.jichi.ac.jp/pathol/

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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