自己免疫疾患の病態形成には、免疫の司令塔としてはたらき、自己抗原を認識する受容体をもつT細胞が重要な役割を果たすことが知られている。とりわけ免疫応答を促進するヘルパーT細胞と抑制するTreg細胞のバランスの破綻が自己免疫疾患をはじめとするさまざまな疾患進行の鍵を握るが、その破綻機構は不明な点が多いゆえに自己免疫疾患のメカニズムは未だ解明されておらず、根本的な治療法は確立されていない。 転写因子Foxp3はTreg細胞のマスター転写因子であり、Foxp3の機能欠失はTreg細胞の欠損によりヒトやマウスにおいて致死的な自己免疫疾患を引きおこすことが知られている。申請者らはこれまでに自己免疫性関節炎において炎症と骨破壊を増悪化する新規病原性T細胞を同定し、この細胞がFoxp3+T細胞から分化転換することを見出している。さらに近年、口腔内細菌叢の恒常性の破綻によって誘導される歯周炎においても、その骨破壊を誘導する主たる細胞であることや口腔免疫に主要な役割を果たす細胞であることを見出している。しかしながらその病原性を司る分子基盤は不明である。本研究では新規病原性T細胞サブセットなどに着眼して、その分化と機能を司る分子基盤を解明し自己免疫の制御法を確立することを解明することを目的とする。今年度は種々の遺伝子改変マウスの作製やRNAseq解析などを行い、本研究の遂行に必須となる研究基盤を確立した。
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