関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患の病態形成のメカニズムは未だ解明されておらず、根本的な治療法は確立されていない。自己抗原を認識する受容体をもつT細胞が重要な役割を果たすことが知られている。申請者が同定した自己免疫性関節炎を増悪化する病原性T細胞は、関節特異的な間葉系細胞である滑膜線維芽細胞によって誘導され、滑膜線維芽細胞の破骨細胞誘導能を亢進させる。これまでに自己免疫性関節炎において滑膜線維芽細胞が主要な破骨細胞誘導細胞であることを自己免疫性関節炎感受性のマウス系統において実証し、病原性T細胞と滑膜線維芽細胞の協調作用の重要性を明らかにすることに成功している。今年度では第一に昨年度に引き続き病原性T細胞の機能を司る分子基盤の解明の研究を行った。第二に骨破壊性の滑膜線維芽細胞に着目し、破骨細胞誘導因子の発現に必要な、滑膜線維芽細胞特異的な遺伝子発現制御領域およびこの遺伝子領域に結合する転写因子を同定した。滑膜線維芽細胞特異的に当該転写因子を欠損させたマウスでは関節炎の関節破壊が抑制されることを見出し、骨破壊性の滑膜線維芽細胞が誘導される仕組みの一端を明らかにした。第三に、関節炎の早期に重要な役割を果たすT細胞発現遺伝子に着目し、網羅的トランスクリプトーム解析のデータベースの統合を行い、関節炎発症早期に発現が上昇し、治療によって発現が減少するT細胞発現遺伝子群を同定することに成功した。遺伝子欠損マウスを作成したところ自己免疫性関節炎が抑制されることを見出され、同定したT細胞発現遺伝子リストの有用性が示唆された。今後これらの知見を発展させ、関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患の治療法の開発に繋げていく予定である。
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