研究課題
申請者らは、表皮を真皮に係留するのに必須な構造体であるヘミデスモソームの構成因子が、皮膚にある毛包幹細胞の運命制御とその組織老化に関わることを世界に先駆けて明らかにしてきた(Matsumura et al, Science 2016)。近年、組織幹細胞の分裂制御が、その自己複製と分化のバランスを決定することが示唆されつつあるが、ヘミデスモソームが、幹細胞分裂制御に関わる可能性については、全く解明されていない。本研究では、ヘミデスモソームの構成因子である1 7 型コラーゲンおよび、インテグリンα6、加えて分裂制御因子の毛包幹細胞特異的な欠損を誘導できるマウスや加齢マウスを用いて、加齢により変化するヘミデスモソームが、幹細胞分裂制御に関わるのか検証し、組織幹細胞の自己複製を制御する仕組みを解明する。これにより、幹細胞分裂制御を軸とした組織再生や抗老化戦略へと繋げることを目的としてきた。昨年度までに、ヘミデスモソーム構成因子であるCol17a1遺伝子およびItga6遺伝子の毛包幹細胞特異的欠損マウスの作製した。そこで、組織免疫染色法などにより、分裂軸および、分裂極性を解析したところ、それらヘミデスモソーム構成因子が、その制御に関わる可能性を明らかにしてきた。また、同様に、分裂制御に関わるaPKCλ遺伝子毛包幹細胞特異的欠損マウスの作製し、解析したところ、分裂軸および、毛包幹細胞の分裂制御に関わる可能性を示唆するデータを得ている。本年度では、どのようにして、それらの分子が分裂軸制御を通じて機能的に幹細胞を維持に関わるのか検証をおこなっている。
2: おおむね順調に進展している
昨年度までに、分裂制御に関わるaPKCλ遺伝子毛包幹細胞特異的欠損マウスの作製し、解析したところ、分裂軸および、毛包幹細胞の分裂制御に関わり脱毛に繋がる可能性を示唆するデータを得ている。これらのことから、当初の目的である毛包幹細胞の分裂制御が、幹細胞制御に関わる可能性があるのかどうか明らかにできているためおおむね順調に推進していると考えられる。
今後の研究の推進方策として、ヘミデスモソーム構成因子Col17a1およびItga6などの分子が、どのようにして分裂制御に関わる分子などを制御することで、分裂軸制御を行い、機能的に幹細胞を維持しているのか検証をおこなっている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 図書 (3件)
Journal of Dermatological Science
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10.1016/j.jdermsci.2020.01.008
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