研究課題/領域番号 |
18H02640
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
濱崎 洋子 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (10362477)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胸腺 / 胸腺上皮細胞 / ハッサル小体 / 自己寛容 |
研究実績の概要 |
胸腺組織は、自己MHCを認識しかつ自己応答を起こさない多様な反応性を有するT細胞の産生に特化した臓器であり、T細胞分化選択の主要な支持細胞(ストロマ細胞)である 胸腺上皮細胞が組織の骨格を形成する。胸腺髄質領域は、T細胞の自己寛容(自己を攻撃しないよう保証すること)に関わる領域であるが、髄質領域で最も特徴的な角化した構造体「ハッサル小体」(HC)の形成機構とその意義については不明な点が多い。HCは通常表皮ケラチノサイトに特徴ていな角化が顕著なことから、“死につつある胸腺髄質上皮細胞の凝集塊”と長らく考えられてきたが、自己寛容の成立に必須の役割を果たす核内因子AIREに依存して形成されることが明らかになり、改めて注目が集まっている。本研究では、近年急速に発展してきた胸腺髄質上皮細胞の分子細胞学的知見と、申請者らが開発したHCを形成するマウス髄質上皮細胞の回収技術を基に、その形成機構と機能、そしてHCの異常と自己寛容破綻との関連を明らかにすることを目的としている。これまでに、表皮角化細胞の分子マーカーのレポーターマウスを用いて、HCを構成する胸腺髄質上皮細胞を純化し、その遺伝子発現の網羅的解析を行った。その結果、HCを形成する髄質上皮は定常状態で恒常的に細胞老化を来たしていること、またCXCL5やIL-1ファミリーなどの炎症性分子を高発現していることが明らかになった。CXCL5に反応すると想定される好中球をdepletionすることでpDCの活性化を抑制されることから、SASPの一環として産生されるCXCL5に反応して胸腺内好中球がリクルート・活性化され、活性化好中球が胸腺内pDCの活性化をもたらす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した結果と一致して、遺伝的にHCの過形成を呈するマウスでは、pDCの活性化が亢進しており、低形成を呈するマウスでは、胸腺内SASP因子の発現が低く、またpDCの活性化、特にIFNaの発現が低いことが明らかとなった。そこで、pDCの活性化の上流にあると考えられるHCを形成する髄質上皮が産生する様々な炎症性因子の胸腺上皮特異的KOマウスの作製を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
作製中のマウスができ次第解析を行う。これにより、胸腺内pDCの活性化に直接関わる因子と、pDCの産生するIFNaの正常な胸腺機能における役割、およびHC過形成時における過剰な胸腺内IFNaの意義をあきらかにする。
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