研究課題/領域番号 |
18H02642
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
笹井 美和 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (30631551)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オートファジー / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
本研究は、オートファジー関連遺伝子(Atgs)によるオートファジー非依存的な機能の網羅的な解析を目的としています。応募者は先の研究で、IFN-γ刺激による抗病原体機構にAtg8ファミリーの一部がオートファジー非依存的に関与している事を明らかにしましたが、それ以外にもいくつかの現象において、Atg遺伝子の欠損により様々な生体応答の変化することを、すでに予備的知見として得ています。興味深いことに、これらの変化は全てのAtg欠損マウスや欠損細胞に共通しているわけではないことから、ほぼ全てのAtgが関与しているオートファジーとは異なり、それぞれのAtg遺伝子の持つ特異的な機能であることが強く示唆されます。本年度は、予備的結果を得ている現象の中でも、Atg遺伝子による炎症応答の制御について解析を行い、Atg遺伝子の中でもAtg8 familyの一部の遺伝子を欠損すると炎症性サイトカインの産生が亢進している結果が得られました。この炎症性サイトカインの産生は、ある特定のシグナル伝達経路を介して産生されることが知られていることから、Atg8 familyがこのシグナル伝達経路に関与している可能性が強く示唆されました。そこで、Atg8 family欠損マウス骨髄由来マクロファージに様々な刺激を与え、Atg8 familyが関与しているシグナル経路について検討した結果、Atg8 familyは特定の炎症性サイトカインの産生を誘導するシグナル伝達経路の中でも、非標準のシグナル伝達経路にのみ関与していることが明らかとなりました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジー関連遺伝子によるオートファジー非依存的な経路の解明において、本研究で行う予定にしていた4個の項目のうち、1つにおいて、オートファジー非依存的である新しい炎症制御機構を明らかにしつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析の結果、Atg8 familyはある特定の炎症性サイトカインを産生するシグナル伝達経路の中でも、非標準のシグナル伝達経路に特異的に関与していることが示唆されていることから、この特異性を示すAtg8 family分子の作用機序について詳細を解析する予定です。また、生体内でこのAtg8 familyによるサイトカイン産生の制御機構が破綻した際にみられる応答についても解析を行い、その成果を学術論文にて報告する予定です。 また、既に予備的結果を得ている現象の中でも炎症性腸疾患に関して、コンディショナルノックアウトマウスの作成が完了したことから、予備的結果がAtg遺伝子の上皮側の欠損によるものなのか、それとも血球側の欠損によるものなのかを明確にすると共に、組織染色やフローサイトメトリー等を用いて、詳細な解析を行う予定にしています。 さらに、その他の予備的結果を得ている現象に関しても、RNAseq等を行い、原因の解明を目指します。
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