研究課題/領域番号 |
18H02643
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
村雲 芳樹 北里大学, 医学部, 教授 (40324438)
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研究分担者 |
櫻井 靖高 北里大学, 医学部, 助教 (50733101)
一戸 昌明 北里大学, 医学部, 講師 (80365163)
吉田 松生 基礎生物学研究所, 生殖細胞研究部門, 教授 (60294138)
市原 正智 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (00314013)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | REV7コンディショナルノックアウトマウス / 生殖細胞 / 精子形成 / プロモーター解析 |
研究実績の概要 |
野生型マウス精巣におけるREV7の発現分布を、抗REV7抗体と各種生殖細胞マーカーを用いた蛍光免疫染色により検討した。その結果、REV7は精原細胞、精母細胞にて高発現しているが、精子細胞、精子には発現が低く、セルトリ細胞にはほとんど発現していないことが明らかになった。次に、生後8週齢のRev7flox/flox/Ubc-Cre/ERT2マウスにtamoxifenを腹腔内投与し、成体になってからRev7を欠失させたマウスを作成したところ、精巣のREV7蛋白発現は、tamoxifen投与開始後3日目より減少し始め、2週間後にはわずかに検出できるのみとなった。精細管の組織学的解析では、tamoxifen投与開始後7日目では形態学的にほとんど変化は見られなかったが、14日目には精原細胞のみがほぼ消失した状態となり、28日目には精細管内の生殖細胞が大部分消失した。Rev7flox/+/Ubc-Cre/ERT2、Rev7+/+/Ubc-Cre/ERT2マウスではtamoxifen投与によりほとんど形態学的に変化は認められなかった。以上より、REV7はマウス生殖細胞の生存に必須の蛋白であることが明らかになった。 また、REV7発現をコントロールするプロモーター領域の解析を行った。REV7のプロモーター領域のゲノムを組み込んだベクターを用いて、ルシフェラーゼアッセイによりプロモーター領域を解析したところ、2カ所の転写活性化領域があることが明らかになった。その領域内の転写因子結合領域をバイオインフォマティクスにより解析したところ、転写調節因子の候補が見つかった。その転写因子結合領域に変異を導入したところ、ルシフェラーゼ活性が低下することが確認できた。現在、さらに詳細に解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、①精巣におけるREV7蛋白の発現分布の解析、②tamoxifen誘導性Rev7欠失による精巣の組織学的変化の解析、③Rev7トランスジェニックマウスによる表現系のレスキュー、④Rev7欠失によるエピゲノム制御への影響の解析、を行う予定であった。①②についてはほぼ目的を達成したが、③については所有しているRev7トランスジェニックマウスがこの実験系では使用できないことが判明し、計画を中止した。④については、生殖細胞の生存、分化段階におけるヒストンメチル化についての情報を収集し、抗体を購入して解析を始めたところである。 その他に、次年度行う予定であったRev7欠失による遺伝子発現の変化の解析を始めている。 REV7遺伝子プロモーター領域の解析についても、次年度行う予定であったが、今年度前倒しで解析を開始しており、順調に結果が得られている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はRev7欠失により生殖細胞内で何が起きているのか、解明を進める。 ①Rev7欠失による生殖細胞でのヒストンメチル化への影響について、免疫組織化学染色とウエスタンブロッティングにより解析する。変化が確認された場合、ヒストンメチル化酵素についても発現の変化を解析する。②レーザーマイクロダイゼクションを用いて生殖細胞からRNAを抽出し、Rev7欠失後の生殖細胞における遺伝子発現の変化をcDNAマイクロアレイにより解析する。③生殖細胞におけるREV7の結合蛋白の同定を行う。生殖細胞の腫瘍である胚細胞腫瘍の細胞株を用いて、REV7高発現細胞株を樹立し、プルダウンとマススペクトロメトリー解析によるREV7結合蛋白の網羅的同定を行う。これらの結果により、生殖細胞におけるREV7の役割の解明を目指す。④現在進行中であるREV7遺伝子プロモーター領域の解析もさらに進め、生殖細胞におけるREV7高発現のメカニズムの解析を進める。⑤精子形成不全患者の精巣の生検検体を用いて、REV7の蛋白発現について免疫組織化学染色により解析する。REV7蛋白発現異常が精子形成不全の原因となっている可能性について明らかにする。
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