研究課題/領域番号 |
18H02646
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 秀人 愛知医科大学, 付置研究所, 教授 (90240514)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バーシカン / プロテオグリカン / 細胞外マトリックス / 創傷治癒 / タンパク質分解酵素 / ノックインマウス |
研究実績の概要 |
細胞外マトリックス(ECM)型プロテオグリカンのバーシカン(Vcan)は各種病態の組織破壊後の修復の際に一過性に高発現し、間質細胞の挙動を制御してECMの再構築に重要な役割を果たす。VcanはADAMTS群の蛋白質分解酵素群によって特異的に分解されその分解産物バーシカインは新たな生理機能を有することが明らかとなりつつある。本研究の目的は、ADAMTS群抵抗性Vcanを発現する遺伝子ノックインマウス(V1R系)に各種病態を作出して、その解析を通じて病態局所のVcanの代謝と分解産物バーシカインの生体内機能を明らかにすることである。 皮膚創傷治癒実験:V1Rのホモ接合体(R/R)と野生型と比較したところ、R/Rでは創傷作出後Day 2, Day 5で治癒の促進が認められた。組織学的にDay2, Day 5ではR/Rにおいて表皮の遊走の亢進、創底部と周囲の肉芽形成の促進が観察され、免疫染色ではVcanの蓄積、Smooth Muscle Actin陽性筋線維芽細胞の増加が確認された。このことは、創傷治癒早期のVcan分解は主としてADAMTS群が司るが、創傷治癒後期では他の酵素がVcan分解に寄与することを示している。細胞培養系において、R/Rの皮膚線維芽細胞ではSmad2/3の核移行の促進がみられ、VcanがTGFbetaシグナルを亢進させると考えられた。本研究成果は2020年にMatrix Biologyに論文発表した。 DSS腸炎実験:デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を用いて腸炎を作出して炎症の程度を比較したところ、R/Rでは炎症の軽減、炎症細胞浸潤の増加が観察された。炎症細胞は組織破壊に寄与するため本観察結果は通常の概念と矛盾する。現在、腸管に浸潤する炎症細胞の性状解析、R/Rならびに野生型の骨髄単球/マクロファージの性状解析を遂行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮膚創傷実験は順調に進みすでに論文発表することができた。DSS腸炎実験に関しても順調に実験を遂行しており投稿の目途が立っている。さらに腫瘍移植実験でも一定の成果が挙がりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、①創傷治癒モデル、②DSS腸炎モデル、③肝線維症モデル、④腫瘍移植実験を予定していた。①に関しては既に論文発表し、②も実験結果が蓄積されている。③に関しては免疫染色の技術的な困難のため中断している。④も既に着手済で徐々にデータが集まりつつある。 今後は①ADAMTSバーシカナーゼ以外のタンパク質分解酵素の関与、②バーシカインの作用機構、③Vcan以外の類似分子にバーシカイン同様の機能があるか否か、に関して検討を進める。
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