研究実績の概要 |
貪食・咀嚼食は赤痢アメーバの病原機構において重要な役割を果たす。接着に伴い誘起されるAGCK1の上流の分子機構を解明するために、AGCK1の動員を決定する上流のシグナル実行分子(受容体)とヒト側のリガンドを生化学的方法により同定することを目標1として研究を展開した。赤血球を老化・酸化ストレス暴露・ノイラミニダーゼまたはトリプシン処理することにより、貪食・咀嚼食を制御する条件を確立した。赤血球表面のシアル酸が咀嚼食を誘導するリガンドであることが予測された。そこで赤痢アメーバ膜画分抽出液からシアル酸付加ビーズを用いてシアル酸結合タンパク質を分離・精製・質量分析解析した。Sec24, Vps35, Coatmer beta subunit, UDP-glucose:glycoprotein glucosyltransferaseを始めとする多くのタンパク質が同定された。目標2として細胞膜上で咀嚼食に関わるフォスファチジルイノシトールリン酸(PIP)の産生・分解調節機構の理解のため、咀嚼食においてPIP3の合成に関与するキナーゼ・フォスファターゼを同定し、その貪食・咀嚼食における役割を解明するための研究を行った。ゲノムから11種のPI-kinaseと23種のPI-phosphataseを同定した。Class I PI3K, Myotubularin, Type II PI 5-phosphataseの特徴的な遺伝子重複と多様化が特徴的に見られた。その中から、膜結合ドメインの有無、mRNA発現量、重複性などの情報から、5種の遺伝子(Class I PI3K, EHI_006130; Class III PI3K, EHI_096560; PTEN, EHI_197010; Type II PI 5-phosphatase, EHI_160860; SacI, EHI_141860)の組換えタンパク質の作成を行った。
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