研究課題/領域番号 |
18H02652
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森川 一也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90361328)
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研究分担者 |
尾花 望 筑波大学, 医学医療系, 助教 (00722688)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 限定的発現 / 黄色ブドウ球菌 / esp |
研究実績の概要 |
限定的発現遺伝子esp (expression in minor subpopulation)は数パーセント以下の細胞で限定的に発現するものであるが、多くのesp遺伝子の役割は不明である。本研究は、espが生む細胞集団の多様性に基づいた新たな特性を明らかにすることを目標にしている。 本年度はセルソーターでesp発現細胞の分取を行い、生細胞10^7個程度の回収、そこからのRNA精製に適した方法を検討した。再現よく発現細胞が回収できるesp遺伝子がある一方で、一部レポーターの蛍光強度がセルソーターには十分でないものがあることが判明したため、それについては新たなレポーター系の作成を開始した。 20種類のesp遺伝子群の発現を異なる培養条件でも調べなおし、少なくとも3種類のespが培養条件に関わらず常に数パーセントの細胞で発現することを確認した。2種類のesp遺伝子については遺伝子欠損株を作成し、表現型の解析に着手した。 黄色ブドウ球菌の病原性制御因子Agrに関して、可逆的なphase variantが存在すること、Agr-negative集団の中のrevertantはAgrはOFFのままであるが、ファゴソームに取り込まれるとAgrをONにすることなども確認した。臨床検体ではしばしばAgr変異が見出されるが、このような細菌集団でもAgrが条件を満たせば限定的に発現することを示した成果であり、報告に向けてとりまとめた(投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画ではいくつかのesp遺伝子に関して全遺伝子発現解析までを行う予定であったが、細胞分取条件の精査、レポーター強度の不足などに対応するため追加の実験が必要となり、発現解析の着手には至らなかったため、「やや遅れている」の区分とした。一方で、Agr系に関しては当初予定しなかった研究が進み、Agrも限定的発現する局面があること、その限定的発現に至る遺伝学的メカニズム、そして発現条件の証明までを完了することができている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に沿ってすすめる。セルソーターでesp発現細胞を回収後、RNA-seqにより「同時に発現する遺伝子セット」を解明する。「espと同時に発現する遺伝子セット」の機能予測によりそれらが担う特性を予想し作業仮説とする。幾つかのespは何らかの輸送系オペロンの一部であるので、同時発現遺伝子セットの状況にもよるが、微量元素取り込み、乾燥・浸透圧耐性、飢餓適応、ヒト細胞への毒性などを想定している。 また、本年度Agr系が限定的に発現する局面があることを見出したので、これが実際の感染局面でも起こっているかを明らかにする実験をすすめる。
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