研究課題/領域番号 |
18H02655
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
Toma Claudia 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40325832)
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研究分担者 |
中村 修一 東北大学, 工学研究科, 助教 (90580308)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レプトスピラ / 尿細管 / 上皮細胞 |
研究実績の概要 |
人獣共通感染症であるレプトスピラ症の病原体レプトスピラは、様々な哺乳動物を宿主として腎臓に定着し尿中へと排出される。レプトスピラは環境中でも生存する能力を有しており、汚染した土壌や川などが感染源になリうる。本菌は、皮膚・粘膜(口腔、眼など)から宿主へ侵入し、宿主の防御機構からエスケープし、標的臓器である肝臓や腎臓へと移行する。レプトスピラ症の第1期(発熱期)では血液からレプトスピラが検出され、抗菌薬による治療は効果的である。しかし、続く第2期では、腎不全まで進行した場合には、無治療のままでは死に至る。本菌は、未知の分子機構によって近位尿細管上皮細胞(renal proximal tubule epithelial cell, RPTEC)に定着し、宿主の防御システムから逃れる。したがって、この感染機構を理解することはレプトスピラ症の重症化と感染サイクルを遮断するために重要である。本研究では、レプトスピラが尿細管上皮細胞の感染戦略を明らかにすることを目的とする。 令和元年度は、レプトスピラはカドヘリンを切断することによってRPTECのタイトジャンクション(tight junction, TJ)を破壊し、RPTECを側底部(basolateral側)から上部(apical側)へと移行することが明らかになった。また、固定細胞の顕微鏡観察により,RPTECを移行中のレプトスピラが細胞のTJに存在することも確認できたため、レプトスピラはparacellular routeより上皮細胞を通過することが証明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元尿細管上皮細胞培養系を用いて病原性レプトスピラまたは非病原性レプトスピラを感染させ、レプトスピラ感染依存的な細胞の変化を多面的に解析した。電子顕微鏡観察により,病原性レプトスピラは感染6時間後には細胞内に存在するが、感染24時間後にはタイトジャンクションが破壊され、菌はparacellular routeを通過することが明らかになった。次に,平成30年度に行ったカドヘリンの解析に加え、上皮細胞接着装置におけるZO-1、クローディンとチンギュリン等の解析を行った。また、カドヘリンを切断するレプトスピラのプロテアーゼ候補に対するペプチド抗体を作成し、感染局所での発現を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、レプトスピラのRPTEC感染戦略を明らかにする目的を達成するために、感染後に誘導される細胞内のシグナル伝達経路を解析する。特に、TJに局在する分子のリン酸化状態とその活性化に関与しているAMP活性化プロテインキナーゼについて病原性と非病原性レプトスピラの感染による変化を調べる。次に、細胞間接着装置を構成するタンパク質と細胞骨格の分子との結合について解析し、病原性レプトスピラが標的とする宿主分子を明らかにる。 さらに、TJの破壊に関与している細菌因子の候補として、レプトスピラの運動性に重要な鞭毛とリポ多糖について研究分担者の中村博士と解析を進める。カドヘリンの切断に関与していると考えられるプロテアーゼの解析については、令和元年度に作成したペプチド抗体やセリンプロテアーゼ阻害剤などを用いてその役割を明らかにする。得られた研究成果を取りまとめ日本細菌学会で発表を行い、国際誌に学術論文として投稿する。
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