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2019 年度 実績報告書

宿主細胞内におけるレジオネラの多彩な生存戦略の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18H02656
研究機関東京薬科大学

研究代表者

新崎 恒平  東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (70609990)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードレジオネラ / レジオネラエフェクター / Rabタンパク質 / 細胞内小胞輸送 / 小胞体
研究実績の概要

本申請研究では、以下に示す3点のテーマを柱としている。そこで、当該年度の研究実施計画をテーマごとに記載する。
1:LCVのリソソームへの輸送回避機構の解明:当該年度の解析により、レジオネラによるRab5のユビキチン化の種類がK63チェーンによって媒介されるユビキチン化であることを見出した。また、Rab5は不活性化型(GDP型)と活性化型(GTP型)をサイクルする分子であるが、レジオネラは活性化型のRab5を特異的にユビキチン化していることを見出した。
2:LCVの小胞体への輸送機構の解明:昨年度の解析により同定したRab33bの局在を制御するレジオネラエフェクターの遺伝子破壊株を用いた感染実験を行い、当該レジオネラエフェクターを欠損させたレジオネラを含むLCV上に供給さえるRab33bの割合が野生型のレジオネラと比較して有意に減少することを見出した。また、本欠損株ではLCVの小胞体への到達に著しい遅延を示した。
3:レジオネラの小胞体定着機構の解明:当該年度の解析により、滑面小胞体と粗面小胞体を循環するBap31と結合するレジオネラエフェクターを同定し、本レジオネラエフェクターの遺伝子破壊によりLCVに集積するBap31が減弱することを見出した。また、本遺伝子破壊株を含むLCVは滑面小胞体から粗面小胞体への移行が抑制されていることも明らかにしている。また、レジオネラは小胞体内において効率良く増殖する際に宿主細胞のclimp-63を利用する。ハエにはclimp-63の遺伝子が存在せず、ハエ由来の細胞にヒト由来のclimp-63を発現させることで、レジオネラ増殖におけるclimp-63の重要性を示すことができると考えた。当該年度は、ハエ由来の細胞であるS2細胞の培養系の確立とヒトclimp-63を発現できるハエ発現ベクターの構築まで完了した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本申請研究は、申請時に計画したプラン通り順調に進展していると考えている。理由は以下に記載する。
本申請研究は3本の柱(1:LCVのリソソーム輸送回避機構の解明、2:LCVの小胞体への輸送機構の解明、3:レジオネラの小胞体定着機構の解明)を軸として行ってきた。まず、研究計画1に関してはレジオネラ感染に伴うRab5のユビキチン化の詳細が分かってきた。ユビキチン化には大きく二つの機構(分解とシグナル)が存在するが、レジオネラはシグナルに寄与するユビキチン化をRab5に行っていることを見出した。更に、このユビキチン化は活性型(GTP型)のRab5に特異的であることを見出せたことも今後の解析に有意義な情報となる。また、2と3に関しては各々の経路に関与するレジオネラエフェクターが同定できたことが極めて重要な進捗であった。Rab33bをLCVへとリクルートするプロセスに必要なレジオネラエフェクターとBap31の機能を制御するレジオネラエフェクターの同定まで成功したことから、今後はこれらのレジオネラエフェクターが標的分子をどのように制御しているのかを解析することで、これらの事象の詳細な分子メカニズムの解明に繋げられることが強く期待される。

今後の研究の推進方策

本申請研究の今後の推進方策をテーマ毎に以下に記載する。
1:LCVのリソソームへの輸送回避機構の解明では、レジオネラによってユビキチン化されたRab5の機能的影響を評価する。レジオネラはK63チェーンによるRab5のユビキチン化を惹起するが、通常K63チェーンはシグナルに寄与するユビキチン化である。そこで、K63ユビキチン化されたRab5の挙動を解析する。また、ユビキチン化されるRab5のアミノ酸部位の同定も行い当該アミノ酸を変異させたRab5の発現がレジオネラ感染に及ぼす影響も評価する。
2:LCVの小胞体への輸送機構の解明では、Rab33bをLCVへとリクルートするレジオネラエフェクターのRab33bに対する活性(GDF活性やGEF活性)を生化学的手法により解析する。また、何らかの活性が見いだせたら、その活性に重要となるアミノ酸の同定及び活性を失った変異体の作製を行う。活性不活型変異体を発現させたレジオネラの感染実験により、本レジオネラエフェクターのRab33bに対する活性のレジオネラ感染における重要性を示すことができる。
3:レジオネラの小胞体定着機構の解明では、Bap31と結合しBap31をLCVに集積させるレジオネラエフェクターの具体的な役割を解析する。レジオネラから分泌された当該レジオネラエフェクターの局在や分泌のタイミングなどを評価する。また、ハエ由来の細胞(S2細胞)にヒトclimp-63を発現させ、その細胞にレジオネラを感染させ増殖への影響を評価する。もし、通常のS2細胞よりもヒトclimp-63を発現しているS2細胞でレジオネラの増殖亢進が見られれば、レジオネラ増殖におけるclimp-63の重要性を強く証明できる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Syntaxin 17 Recruits ACSL3 to Lipid Microdomains in Lipid Droplet Biogenesis2019

    • 著者名/発表者名
      Kimura Hana、Arasaki Kohei、Iitsuka Moe、Tagaya Mitsuo
    • 雑誌名

      Contact

      巻: 2 ページ: 1~13

    • DOI

      10.1177/2515256419838719

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] MT1-MMP recruits the ER-Golgi SNARE Bet1 for efficient MT1-MMP transport to the plasma membrane2019

    • 著者名/発表者名
      Miyagawa Takuya、Hasegawa Kana、Aoki Yoko、Watanabe Takuya、Otagiri Yuka、Arasaki Kohei、Wakana Yuichi、Asano Kenichi、Tanaka Masato、Yamaguchi Hideki、Tagaya Mitsuo、Inoue Hiroki
    • 雑誌名

      Journal of Cell Biology

      巻: 218 ページ: 3355~3371

    • DOI

      10.1083/jcb.201808149

    • 査読あり
  • [学会発表] レジオネラエフェクターLpg1137の局在化機構2020

    • 著者名/発表者名
      村田美咲, 多賀谷光男, 新崎恒平
    • 学会等名
      第93回日本細菌学会総会
  • [学会発表] レジオネラエフェクターの生化学ツールとしての応用2020

    • 著者名/発表者名
      新崎 恒平
    • 学会等名
      第93回日本細菌学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] レジオネラエフェクターLpg1137の局在化機構2019

    • 著者名/発表者名
      村田美咲, 多賀谷光男, 新崎恒平
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] Syntaxin 17はNLRP3インフラマソームの形成に必要である2019

    • 著者名/発表者名
      飯塚萌, 多賀谷光男, 新崎恒平
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] Role of Endoplasmic Reticulum proteins Bap31 and CLIMP-63 in maintaining the Legionella pneumophila replicative niche2019

    • 著者名/発表者名
      木村葉那, 野内優, 多賀谷光男, Shaeri Mukherjee, 新崎恒平
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] Syntaxin 17と結合タンパク質が織りなす多様な機能2019

    • 著者名/発表者名
      新崎恒平, 多賀谷光男
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [図書] 臨床免疫・アレルギー科2019

    • 著者名/発表者名
      新崎恒平
    • 総ページ数
      8
    • 出版者
      科学評論社
    • ISBN
      1881-1930

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公開日: 2021-01-27  

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