研究課題/領域番号 |
18H02657
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
小田 真隆 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (00412403)
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研究分担者 |
栄田 敏之 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (00304098)
林 直樹 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (70707463)
加藤 伸一 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (90281500)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機能性糖脂質 / 水様性ビザンチン / 肺炎 / ミュータンス菌 / TLR4/MD-2受容体 |
研究実績の概要 |
高齢化や薬剤耐性菌の増加に伴い,感染症による死者数が増大しており,2050年には,感染症に対して抗菌薬以外の対策を講じなければ薬剤耐性菌による死者数が1000万人に上ると予測されている.代表者は,このような問題を打開すべく,免疫賦活作用を有するビザンチンを開発し,感染症に対する効果について探索した. 令和元年度は,ビザンチンの構造をリファイメントすることにより得られた水溶性ビザンチンの受容体探索を前年度に続いて行った.前年度の解析結果では,水様性ビザンチンがTLR4/MD-2受容体とMincle受容体に作用していると示唆されるデータが得られていたが,TLR4/MD-2受容体への作用が強く,Mincle受容体への作用は弱いことが判明した.また,肺炎球菌や黄色ブドウ球菌による肺炎に対する水溶性ビザンチンの効果を検討したが,当分野で構築した肺炎モデルマウス(菌の気管支投与)では,肺炎症状が急速に進み,水様性ビザンチンによる肺炎治療効果が認められなかった.一方,誤嚥性肺炎の起因菌である口腔内細菌に対する水様性ビザンチンの効果を検討した結果,水様性ビザンチンは,ミュータンス菌のグルコシルトランスフェラーゼBとCの細胞内蓄積を亢進させることによりバイオフィルムの成熟を阻害することが判明した.今後,この特徴的な作用を活かしたう蝕予防剤の開発を進めていきたい.また,次年度は,TLR4/MD-2受容体への水様性ビザンチンの作用に着目し,敗血症治療薬としての可能性についても調査する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までは,肺炎球菌を経鼻的に投与することにより細菌性肺炎モデルを作製していたが,データが安定しなかったため,ブラント針と光ファイバーを組み合わせた独自の細菌噴霧装置を作製し解析した.その結果,肺炎球菌による肺炎モデルマウスを安定して得られるようになったが,水様性ビザンチンの細菌性肺炎に対する予防および治療効果は認められなかった.細菌噴霧装置を用いて作製した肺炎モデルマウスでは,症状が急速に進んでしまうため,抗菌作用や抗炎症作用の無い水様性ビザンチンでは抗感染症効果が得られなかったのではないかと考えられた.マイルドな肺炎モデルを作製するためには,感染用インビボイメージング装置を用いて解析する必要性があるため,細菌性肺炎に対する水様性ビザンチンの効果に関する解析を保留とした. 次に,誤嚥性肺炎の起因菌である口腔内細菌に対する水様性ビザンチンの効果を検討した結果,水様性ビザンチンは,ミュータンス菌のグルコシルトランスフェラーゼBとCの細胞内蓄積を亢進させることによりバイオフィルムの成熟を阻害することが判明した. 前年度までに水溶性ビザンチンが緑膿菌PAO1株の増殖速度やプロテアーゼ活性に影響を与えることなく,ムチン層透過能力や寒天培地上におけるswimming運動を抑制することを新たに見出した.そこで,べん毛を有する大腸菌やミラビリス菌の運動性に対する水様性ビザンチンの影響について解析したが,2菌種に対しては効果が認められなかった. 申請通りの進捗ではないが,新たな展開も生まれており,おおむね順調に進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの解析により,水溶性ビザンチンがMincle受容体よりTLR4/MD-2受容体へ強く作用することが明らかとなった.本年度は,本化合物とTLR4/MD-2との関係を詳細に解析するため,HEK-Blue細胞やC3H/HeJマウス(エンドトキシン抵抗マウス)などを用い解析する.また,水様性ビザンチンは,TLR4/MD-2を受容体とするものの炎症性サイトカインの遊離が極めて低く安全性が高いことから,グラム陰性菌外膜に存在するリポポリサッカライド(LPS)による炎症反応に対する本化合物の効果についてインビトロおよびインビボ解析を行う.さらに,水様性ビザンチンがLPSと比較して炎症性サイトカイン(TNF)の遊離量が少ない理由について調べる. 口腔内細菌に対する水様性ビザンチンの効果およびう蝕予防への可能性については,新潟大学歯学部と共同で研究を進める.
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