研究課題
これまでの咽頭スワブ(約100検体)から200株のグラム陰性球菌を収集し、12株のセフトリアキソン(CRO)低感受性非病原性ナイセリア属菌 (CROの最小発育阻止濃度(MIC)が0.5 mg/L以上-淋菌の場合には耐性と判断される)を収集した。これらの株について、Illumina MiSeqによるドラフトゲノム配列を取得し、ribosomal-MLSTによる菌種同定確認、CRO耐性遺伝子penAとその上下流にある遺伝子の配列を決定した。更に、これら耐性株のgenomic DNAをCRO感受性淋菌に自然形質転換することで耐性を付与するかを確認した。12株中10株のgenomic DNAを用いた自然形質転換実験において、transformantを得ることが出来た。得られたtransformantのCROに対するMIC値はdonor株と同等の値を示した。CROのMICの上昇が確認されたたtransformantについては、Illumina MiSeqによるドラフトゲノム配列を取得した。得られたゲノム情報より、penA遺伝子領域を中心におよそ6kbpの配列を抽出した。これらの領域について以下の組み合わせにおいて、配列の不一致数をグラフ化し、組換えの行われた領域の同定を行った(Transformant vs Donor、Transformant vs Recipient)。transformantのpenA遺伝子は、それぞれ、CRO低感受性非病原性ナイセリア属菌のpenA遺伝子の一部と組み変わっていた。よって、得られたtransformantのCROのMICの上昇はpenA遺伝子依存的であることが示唆された。また、この組換えはpenA遺伝子のみではなくその3`末端領域を含めた範囲で起こったことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
初年度は当初の計画通り、12株のCRO低感受性非病原性ナイセリア属菌の解析が順調に進んでいる。また、これらのgenomic DNAをDonorとしたCRO感受性淋菌に自然形質転換することで耐性を付与できることも10株で確認出来た。
本研究課題では、CRO耐性淋菌の出現がナイセリア属細菌間での複数の組換えの結果として起こることも想定している。よって、前年度までに、CRO感受性淋菌を用いてtransformantを得ることの出来なかったCRO低感受性非病原性ナイセリア属菌2株については、CRO感受性非病原性ナイセリア属菌をRecipient、CRO低感受性非病原性ナイセリア属菌2株のgenomic DNAをDonor DNAとし、形質転換実験を行い、初めに性非病原性ナイセリア属菌間の自然形質転換によるCRO低感受性非病原性ナイセリア属菌のtransformant取得を目指す。その後、得られたtransformantのgenomic DNAをDonor DNAとしCRO感受性淋菌に自然形質転換することで耐性を付与することが出来るのか確認する。それぞれ得られたtransformantにおいて、CROのMIC値の上昇が確認された株のgenomic DNAは、前年同様にIllumina MiSeqによるドラフトゲノム配列を取得後、penA遺伝子領域を中心とした配列を抽出し、これらの領域について以下の組み合わせにおいて、配列の不一致数をグラフ化し、組換えの行われた領域を推測する(Transformant vs Donor、Transformant vs Recipient)。また、耐性・感受性株の共培養によって耐性遺伝子の水平伝播の頻度を評価する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
J Antimicrob Chemother
巻: 74 ページ: 印刷中
10.1093/jac/dkz129
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巻: 23 ページ: -
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