研究課題/領域番号 |
18H02659
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
大西 真 国立感染症研究所, 副所長, 副所長 (10233214)
|
研究分担者 |
志牟田 健 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (40370960)
中山 周一 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (80280767)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 淋菌 / 形質転換 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
前年度までに、CRO感受性淋菌を用いてTransformantを得ることの出来なかったCRO低感受性非病原性ナイセリア属菌2株について、最初にCRO感受性非病原性ナイセリア属菌をRecipient、CRO低感受性非病原性ナイセリア属菌2株のgenomic DNAをDonor DNAとし形質転換実験を行った。その結果、非病原性ナイセリア属菌間の自然形質転換によるCRO低感受性非病原性ナイセリア属菌のTransformant を取得した。得られたTransformantのCROに対するMIC値はdonor株と同等の値を示した。Transformantのドラフトゲノム配列(Illumina MiSeq)を取得し、penA遺伝子領域を中心に約6kbpの配列を抽出した。得られら配列の比較解析を行うことで、TransformantのpenA遺伝子は、それぞれ、CRO低感受性非病原性ナイセリア属菌のpenA遺伝子全長を含む領域と挿入されていることを確認した。この結果は、得られたTransformantのCROのMICの上昇はpenA遺伝子依存的であることが示唆された。次に、得られたTransformant (非病原性ナイセリア属菌)のgenomic DNAをDonor DNAとしCRO感受性淋菌に自然形質転換し、donor株と同等のCROに対するMIC値を示すTransformant (淋菌株)を得た。先と同様の方法で、penA遺伝子領域の解析を行い、このTransformantにはCRO低感受性非病原性ナイセリア属菌のpenA遺伝子の一部と組み変わっていることを確認し、TransformantのCROのMICの上昇はpenA遺伝子依存的であることを示した。 ナイセリア属の異なる菌種間でDNAの伝播が起きていること、また菌種の組み合わせによって遺伝子伝播の効率が異なる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形質転換によって、耐性遺伝子を含む領域の菌種間での伝播を再現した。
|
今後の研究の推進方策 |
ゲノム比較:昨年度までの研究実施において得られた耐性株の菌種ごとに1株選択し、完全長のゲノム配列を決定する。さらに、Illumina MiSqリードを利用して感受性株および低感受性株の系統解析を実施する。 penA周辺領域の比較解析: penA遺伝子を含んだ領域が自然形質転換によって菌種間を水平に伝播していることを想定している。そのためCRO低感受性ならびに感受性株のpenA遺伝子の上下流領域を比較解析する。penAのみの想定を描いたが、特に下流遺伝子の解析が重要である。保存されている領域をグループ化し、ゲノム解析で明らかにする系統と相関する部分と相関しない部分とを明らかにすることで、CRO耐性に関与して 水平伝播している領域を推定する。 耐性遺伝子の水平伝播の再現: 上記の実験で得られた感受性株と耐性株を用いて混合培養を行い、耐性遺伝子の水平伝播を再現する。遺伝子伝播の有無と頻度について検証する。CRO感受性淋菌に関してはフルオロキノロン耐性株を用いて実験を行うことでCRO耐性遺伝子の伝播を追うこ とが可能である。非病原性ナイセリア属菌同士の水平伝播の再現に関しては、感受性パターンを参考に受容菌株の選択を行う。同様にアジスロ マイシン耐性株を利用した系も検討する。
|