研究課題
1)HCV NS5Aの脱リン酸化機構の解析とゲノム複製-粒子形成過程スイッチングへの関与: HCV NS5Aはセリンスレオニンキナーゼによってリン酸化されることから、NS5Aの脱リン酸化に働く酵素としてセリンスレオニンプロテインホスファターゼを32種類選抜し、各々の試験管内転写・翻訳系を構築、各タンパク質を合成した。HCV NS5Aとの結合性をin vitro AlphaScreenシステムで解析したところ、3種類のプロテインホスファターゼが結合能を示した。それらについて、動物細胞での発現ベクターを構築し各強制発現がHCVの複製、粒子産生へ及ぼす影響を調べたところ、その中の1種でPP2Cファミリーに属するプロテインホスファターゼを過剰に発現させた時、HCVの粒子産生が有意に低下することを見出した。2)NS5A以外のHCV NSタンパク質が関与する可能性の解析: 他研究グループの報告から、NS5Aタンパク質の他にNS3がHCVの複製だけでなく粒子形成にも関与しうることが示されているがその作用機序は明らかにされていない。NS3の持つRNAヘリカーゼ活性が粒子へのゲノムパッケージングに関与する可能性を考えて、NS3タンパク質C末端側のヘリカーゼ領域の活性中心に点変異を導入しパッケージング解析を行っている。3)HCV因子と相互作用しHCVゲノム複製~粒子形成過程制御関与する新規宿主因子の探索と機能解析: HCV感染によって発現が誘導されるRNA結合因子群の中から、HCV生活環の制御に関わる新規宿主因子を探索した。トランスクリプトーム解析のデータから候補となるRNA結合因子群を選抜し、siRNAスクリーニングを行った。遺伝子ノックダウンによりHCV産生が劇的に低下する因子としてLAファミリータンパク質の1種を見出した。
2: おおむね順調に進展している
1)HCV NS5Aの脱リン酸化機構の解析とゲノム複製-粒子形成過程スイッチングへの関与、2)NS5A以外のHCV NSタンパク質が関与する可能性の解析、3)HCV因子と相互作用しHCVゲノム複製~粒子形成過程制御関与する新規宿主因子の探索と機能解析、とも予定通り進み、特に、1)ではこれまでに同定されていなかったHCV NS5Aホスファターゼを見出すことができた。また、3)では新規HCV生活環制御因子を同定した。
本年度見出した2種類の新規宿主因子の機能解析を中心として、HCVのゲノム複製~粒子形成過程制御の分子機構の解明を目指す。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Virology
巻: 94 ページ: e00858-19
10.1128/JVI.00858-19
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 13085
10.1038/s41598-019-49541-y