研究課題/領域番号 |
18H02662
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 佳 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10593684)
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研究分担者 |
中岡 慎治 北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (30512040)
鈴木 穣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エイズウイルス |
研究実績の概要 |
本年度では、生体内におけるHIV-1感染細胞の性状の多角的な解析に取り組んだ。まず、droplet digital PCR法による解析によって、GFPが陰性のCD4T細胞、すな わち、ウイルス非産生細胞においても、ウイルス由来のDNAが存在することを確認した。このことは、ヒトのゲノムに組み込まれたウイルスDNAは保持している が、ウイルスを産生しない細胞、すなわち、潜伏感染細胞になりうる細胞が、ヒト化マウスモデルを用いた再構築実験においても再現されたことを示唆する。ま た、digital RNA-sequencing法による解析の結果、ウイルス産生細胞において、ウイルス由来のmRNAは、全遺伝子の中でも5番目に高い発現量であることが明らか となった。そして、1細胞レベルの解析の結果、生体内におけるHIV-1産生細胞が不均質な細胞の集団であること、そして特に、CXCL13を高発現する細胞亜集団 と、インターフェロン誘導遺伝子が低発現の細胞亜集団におけるHIV-1の高発現が確認された。このことは、これらの細胞集団が、生体内におけるウイルスの感染 拡大に寄与している可能性を示唆する。 以上のように、本年度は、ヒト化マウスモデルを用いたHIV-1感染細胞のマルチオミクス解析によって、既存の手法では解析がきわめて困難な、生体内における 「真の」HIV-1感染細胞の特徴を多角的に描き出すことに成功した。本研究で用いた研究手法(マルチオミクス解析)は、きわめて汎用的であり、さまざまなウイ ルス研究への応用が可能である。つまり本研究は、ウイルスと宿主の新たな関係性の一端を明らかにした研究であり、また、ウイルスと宿主の相互作用のさらな る解明や、エイズの制圧法の開発に向けた基礎学術基盤の形成に直結する研究であると言える。以上の研究成果を、学術論文にまとめ、Cell Reports誌にcorresponding authorとして発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた計画を遂行した。また、本年度の研究成果を学術論文として発表した(Aso et al., Cell Rep, 2020)。
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今後の研究の推進方策 |
HIVの感染細胞のマルチオミクス解析系は構築できたと言える。今後は、この研究手法を、新型コロナウイルスを含めたさまざまなウイルスに適用し、ウイルスご との病原性発現の差異を解析していく。
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