研究課題
ロタウイルス(RV)は乳幼児に重篤な下痢症を引き起こす。発展途上国を中心に年間約20万人の死亡例が報告されている。本研究では、次世代RVワクチンの開発基盤の確立を目的とし、独自に開発した新規RV遺伝子操作系技術を駆使することで、RVにおける複製機構ならびに病態発現機序の解明を行う。本年度は以下の研究成果が得られた。RV NSP1は抗インターフェロン作用を有する。NSP1遺伝子にレポーター遺伝子を挿入し、NSP1タンパク質の発現を欠損させた場合、組換えウイルスの複製能は低下することが報告されており、NSP1の機能解析や増殖性の高いウイルスベクター開発を行う上で改良が求められている。そのため、大小2種類のNanoLucルシフェラーゼ断片(LgBiTおよびHiBiT)の相補性を利用した発光系であるSplit NanoBiT Systemを応用し、NSP1遺伝子のC末端に11アミノ酸のHiBitを挿入した組換えサルRVを作製した。このウイルスはレポーター活性を示し、増殖性も親株と同程度であった。本成果はRVの基礎研究を進める上で有用なツールと考えられる。RV感染には種特異性があり、遺伝子操作系が確立されているサルRV(SA11株)はマウスに対する感染感受性が低い。マウスに病原性を示すマウスRV(EW株)の遺伝子操作系の開発を試みた結果、完全なEW株の遺伝子操作系の開発には至っていないが、EW株由来10種の分節遺伝子とSA11株由来1種の分節遺伝子を持つリアソータントウイルスの作製に成功し、この組換えウイルスをマウスに接種した結果、下痢の発症が確認された。組換えウイルスの作製が困難なEW株由来分節遺伝子とSA11株由来分節遺伝子とのキメラウイルスを作製し、組換えウイルスの作製阻害に関与する遺伝子領域の同定を試みた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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