研究課題/領域番号 |
18H02664
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
本田 知之 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (80402676)
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研究分担者 |
上田 啓次 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00221797)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ボルナウイルス / カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス / B型肝炎ウイルス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、宿主細胞が細胞核でRNAウイルスとDNAウイルスを検知する機構をそれぞれ同定し、そこから両者に共通する核内異物認識の普遍的な原理を見出すことである。これまで細胞質で起こる抗ウイルス防御システムについては知見が蓄積されてきている。一方で、核内で起こる現象については未だ詳細は解明されていない。特に、核内におけるRNAウイルスの検知・制御システムについては全く報告がなされていない。そこで、本研究では、核に持続感染する唯一のRNAウイルスであるボルナ病ウイルス(BDV)と、核内で潜伏感染を成立させるDNAウイルスであるカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、B型肝炎ウイルス(HBV)をモデルに、宿主細胞がこれらのウイルスを検知する機構を同定することを計画している。さらに、宿主細胞がこれらのウイルスのどのような特性を異物として認識しているかを解明することを目指している。 本年度の研究においては、主に培養細胞系を用いて、以下に示す結果を得た。 (1)BDVに関与するDNA損傷修復(DDR)因子のHBV感染における役割を明らかにするために、HBV持続発現細胞において、各遺伝子のノックダウンし、BDVとHBVの両方に関与するDDR分子を見出した。 (2)HBV持続発現細胞において、(1)で見出したDDR分子群をノックダウンし、その時の遺伝子発現変化をRNA-seqで検討した。いくつかのDDR分子の下流因子候補を見出した。 (3)新しいDDR関連分子を見出すことを期待し、HBVの複製を阻害する新規化合物をスクリーニングした。HBVの複製阻害活性を認める化合物は複数見出したが、その中にDDRに作用するものはなかった。 このように本年度は、核内におけるウイルスの検知・制御システムについて、概ね順調に解析を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題全体の研究計画では、3つの小課題を提案していた。 それぞれ、BDVの認識に関する研究とBDV以外の核内ウイルスの認識に関する研究、そしてそれらの知見を総合して核内ウイルスの「非自己」特性に迫る研究である。前年度は、KSHVに関する知見を得たので、本年度はHBVを中心に解析を進めた。その結果、BDVとHBVに共通して働くDDR分子群を同定するに至った。この知見は今後の研究の方向性を絞る上で、重要な知見である。またその過程で出たデータをまとめ、麻黄湯エキスに抗HBV活性があることやレトロトランスポゾンに細胞増殖を制御する活性があることなど、論文にできた。最終年度では、さらに得られる知見を総合して、核内ウイルスの「非自己」特性を提唱することを目指す。 全体として、当初の計画より若干の変更点はあるが、大きな報告性が出てきており、本研究の目的達成に向けて当初の計画通り、概ね順調に進展していると考えられる。なお、途中で新型コロナウイルス流行により、研究計画の変更が必要となり、次年度の繰越を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に得られた結果をもとにして、HBVの認識に関わる研究およびBDVの認識に関わる研究を進める。一方で、KSHVの認識については、私たち独自に着目する分子が必要であると考え、次年度にはDDR関連分子を起点としてプロテオーム解析を進めたいと考えている。以下にこれらについて具体的な展望を示す。 (1)現在得られている候補DDR分子たちのインタラクトームを解析する。また得られている下流遺伝子候補については、見出したウイルスと別の核内ウイルスにも効果があるか検討する。 (2)現在得られているDDR分子が認識するKSHV・HBV・BDVの要素を明らかにする。それらの要素を比較することで、DDR分子が核内で核内ウイルスを異物として認識する共通原理を見出す。
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備考 |
代表者は2021年1月に大阪大学から岡山大学へ異動した。
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