研究課題/領域番号 |
18H02666
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
俣野 哲朗 国立感染症研究所, エイズ研究センター, センター長 (00270653)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウイルス / 免疫学 / 感染症 / 微生物 / 細胞傷害性T細胞 / 潜伏感染 |
研究実績の概要 |
慢性持続感染を呈するHIV感染症において、ウイルス複製の持続的制御に結びつく機序の解明は重要である。HIV複製制御の維持には、制御下で潜在的複製能を有するウイルス潜伏細胞の制御・排除が必要である。我々はこれまでサルエイズモデルにおいて、ワクチンによる細胞傷害性T細胞(CTL)誘導に基づきウイルス複製制御に至る系を構築し、複製能を有する潜伏細胞のプロウイルスゲノム変異の特徴を明らかにしてきた。本研究はこの系を活用し、ウイルス複製制御サル群から経時的リンパ節・直腸生検および解剖によって各種組織を採取し、潜在的複製能を有するウイルス潜伏細胞の分布・動態および発現プロファイルを明らかにすることとした。主に、主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHC-I)遺伝子 Mamu-A*065:01を有するアカゲサルを用い、Mamu-A*065:01拘束性エピトープ(Gag241-249)特異的CTLの解析を推進している。2018年度にワクチン接種後のSIVmac239接種実験で獲得したSIV複製制御サルを用い、2019年度には、経時的に血液サンプル、リンパ節・直腸生検サンプルを収集して、解析を継続・推進した。末梢血中にウイルスゲノムが検出されないレベルにまでSIV複製が制御されたサルにおいても、CTL反応レベルやプロウイルスゲノムCTL逃避変異選択動態が異なり、これらの動態が潜在的複製能のより鋭敏なマーカーとなると考えられた。Gag241-249エピトープ特異的CTLを認識するテトラマーと変異Gag241-249.244Eエピトープ特異的CTLを認識するテトラマーを用いたCTL反応の解析でも、潜在的複製能を有するSIVの潜伏感染動態を反映すると考えられる結果が得られつつある。今後、解剖サンプル収集も蓄積し、変異プロウイルスやCTLの分布・動態の解析を推進することにより、潜在的複製能を有するSIVリザーバーの同定ならびに潜伏感染動態の解明につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度にワクチン接種後のSIVmac239接種実験で獲得したSIV複製制御サルを用い、2019年度には、経時的に収集した血液サンプル、リンパ節・直腸生検サンプルを活用した解析を推進した。SIV複製が制御されたサルにおいても、CTL反応レベルやプロウイルスゲノムCTL逃避変異選択動態が異なり、これらの動態が潜在的複製能のより鋭敏なマーカーとなることを示す結果が得られた。Gag241-249エピトープ特異的CTLを認識するテトラマーと変異Gag241-249.244Eエピトープ特異的CTLを認識するテトラマーを用いたCTL反応の解析でも、潜在的複製能を有するSIVの潜伏感染動態を反映すると考えられる結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度・2019年度には、MHC-I遺伝子 Mamu-A*065:01を有するアカゲサルを用い、SIV複製制御サル群を獲得し、これらのサルを用いて、経時的に収集した血液サンプル、リンパ節・直腸生検サンプルを活用した解析を推進した。2020年度には、継続的な解析により、各種組織・細胞分画のプロウイルスゲノム塩基配列およびCTL反応の経時的データを収集するとともに、野生型Gag241-249エピトープ特異的CTL反応と変異Gag241-249.244Eエピトープ特異的CTL反応の経時変化に関するデータを蓄積する。これらのデータを活用し、潜伏感染レベルとプロウイルスゲノム変化およびCTL反応変化との関連を解析し、ウイルス潜伏感染と宿主T細胞反応の経時的相互作用を明らかにする。さらに、安楽殺・解剖サンプルを用い、各種組織・細胞のプロウイルス分布、発現プロファイルおよびT細胞反応を調べることによって、潜在的複製能を有するSIVの潜伏細胞同定・動態解明を推進する。
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